研究課題/領域番号 |
23590368
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
八木 知人 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50453098)
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研究分担者 |
田中 雅深 京都府立医科大学, 医学部, プロジェクト研究員 (10444994)
田代 啓 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10263097)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 分子病態学 / 免疫応答 / SFRP2 |
研究概要 |
SFRP2/SDF5はWntシグナルへの競合的拮抗作用により、多くの組織での分化・発達に関与すると考えられている。SFRP2はβ-catenin / serine-threonine kinase glycogen synthase-3 beta(GSK3β)を介在して胚形成に重要な役割を果たしており、同時に、血球系細胞の分化や造血幹細胞の維持、再構築にも関与していることが示唆されている。しかし、免疫細胞における機能は依然分かっていない。今回我々は、独自に作製したSFRP2/SDF5ノックアウトマウス(KOマウス)を用いて免疫細胞の分化、機能解析を行っている。初年度の目標であるフローサイトを用いた解析を軸に行っており、免疫細胞における分化における機能解析を行っている。KOマウスのB細胞がコントロールに比較してより活性化されていることが観察されている。現在この活性化が起きているメカニズムを解析している。 免疫応答においてサイトカインの産生が重要な機能として考えられるため、現在解析を行っている。種々の刺激剤により脾細胞をin vitroで刺激し、サイトカインに特異的な抗体を用いて産生能を解析している。興味深いことに、現在のところT細胞の早期分化については差異を認めなかったが様々なサイトカインの産生能においては差異を認めている。サイトカイン産生はカルシウムシグナルが活性化し、産生が誘発され行われると考えられることから、この差異はカルシウムシグナルを介するものと推測された。そこで次年度に施行する予定であったカルシウムシグナルの解析を本年度に前倒しして行い現在解析中である。 今回のKOマウスを用いて解析により次第にSFRP2遺伝子がどのように免疫細胞の分化、機能に関わっているのか明らかにされつつあり、創薬の対象となりえるのか検討する
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイトカイン産生能を比較解析した結果、産生能に差のある傾向が認められたため、当初より予定していたカルシウムシグナルアッセイを前倒しして行っており、その結果SFRP2はカルシウムシグナルに関与していることが示唆された。また予定していた免疫細胞の分化や活性化の評価も予定通り実施できており次年度に向けて研究、解析の準備も着実に施行できている。今後の実験実施において実験実施の順序を組み替える事で、効率よく解析を行う予定である
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今後の研究の推進方策 |
(1) 昨年度と同様にカルシウムシグナルやサイトカイン産生能について比較検討を行っていく。またカルシウムシグナルはタンパクのリン酸化による活性化に関与することより当初の予定通りタンパク質のリン酸化アッセイを実施する予定である。カルシウムシグナルに関与するNFATsなどのタンパク質のリン酸化をウエスタンブロットなどの手法を用いて比較検討する。(2) 未だ、SFRP2がどのように直接的または間接的にカルシウムシグナルに関与するのか不明であり、SFRP2タンパクを用いることでその機能を解明していく。具体的にはin vivoまたはin vitroにおいてKOマウスより細胞を分離しSFRP2タンパクと混和することによりカルシウムシグナルに変化が起きるか検討する予定である。またその結果、変化や差異を認めればサイトカイン産生能の変化を解析する予定である。(3) SFRP2が細胞増殖にどのように関与しているのか不明な点も多いため細胞増殖やアポトーシスへの関与を検討するため、活性化したカスペースを測定する実験系を構築中である。(4) すでにレトロウィルスを用いたSFRP2発現ベクターを作製しているので、細胞への組み込みを行い細胞の変化を検討する。in vivoの実験に関して骨髄移植が必要であれば移植に向けての準備を検討する。(5) 血液幹細胞における機能を解明するために、まず血液幹細胞の質的、量的の比較検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) B cell ,T cell receptorの下流にあるシグナル伝達を比較するために、タンパクのリン酸化をそれぞれのリン酸化タンパク質に特異的抗体を購入予定であり、具体的にはPLCgammaなどのリン酸化をウエスタンやフローサイトを用いて検討する。(2) SFRP2タンパクによる細胞への直接的又は間接的な作用はまだ十分に解明できていない。そこで、我々の作製したKOマウスの細胞を用いて作用を検討するために、精製されたSFRP2を購入し、細胞と混和してカルシウムシグナルの変化を解析予定である。これによりWntのantagonisitとしての作用以外の機能を有するのか解析する。(3) アポトーシスや細胞増殖への関与を検討するために、カスペースなどの活性を測定する。細胞増殖やApoptosisを誘発する薬剤などを用いてフローサイトやELISAを中心とした解析を実施する予定であり、それぞれの解析に必要な抗体や試薬などを購入予定である。
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