研究課題
最終年度は、これまで取り組んできたコリン欠乏食投与による非アルコール性脂肪性肝炎におけるHIF-1を介した病態制御メカニズムの解明を行った。これまでの解析結果より、肝細胞のHIF-1がペルオキシゾームの脂肪酸酸化にかかわる遺伝子の過度の発現低下により脂肪肝が増悪することを見出している。PPARaは、脂肪酸酸化系遺伝子発現制御にかかわる主要な転写因子であるが、HIF-1はPPARaとそのパートナーであるRXRaの発現制御そのものには関与しないが、その転写共役因子であるPGC1aとlipin-1の遺伝子発現を制御していることを見出した。しかしながら、PGC1aはタンパク質レベルの変化がHIF-1a欠損により認められないこと、一方、lipin-1タンパク質発現がHIF-1依存性であることから、HIF-1a欠損マウスで見られたペルオキシゾーム内脂肪酸酸化系遺伝子発現抑制にlipin-1の発現抑制がかかわっていると考えた。実際、ペルオキシゾームの脂肪酸酸化系の律速酵素であるAOXプロモーターのPPARa結合部位におけるChIPアッセイを行ったところ、コリン欠乏食投与によりこの部位へのlipin-1結合が増強すること、HIF-1a欠損マウスではこの増強が完全に抑制されることを見出した。培養細胞を用いた解析より、コリン欠乏培地下では細胞内に脂質が蓄積し、この変化はHIF-1a遺伝子の不活化によりさらに増悪すること、またコリン欠乏によるlipin-1の発現増強がHIF-1依存性であることが確認できた。さらに、HIF-1a遺伝子を抑制した細胞で認められたコリン欠乏誘導性の脂質蓄積がlipin-1の過剰発現により完全に抑制されることも見出した。以上の結果より、HIF-1はlipin-1の発現制御を介してコリン欠乏食誘導性脂肪肝の進展に対する防御因子として機能することが明らかになった。
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Diabetologia
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