本研究では、過剰なアルコールや高脂肪食の摂取により生じる脂肪性肝疾患の発症・進展機構における低酸素ストレス応答の機能解析を行った。この応答システムの中心分子である低酸素誘導性転写制御因子HIF1が、病態特異的な標的遺伝子の発現調節を行うことで肝脂肪蓄積に対する防御因子として機能していることを明らかにした。一方、HIF1は肝線維化に対して増悪因子として機能することを見出した。この成果は、未だ有効な治療法がない肝硬変や肝がんの基盤病態である脂肪肝の発症・進行を食い止めるために、低酸素ストレス応答の制御が新しい治療法の開発の標的になり得る可能性を示した重要な成果と言える。
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