研究課題/領域番号 |
23590372
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
白川 愛子 宮城大学, 食産業学部, 准教授 (30260285)
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研究分担者 |
義江 修 近畿大学, 医学部, 教授 (10166910)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | CXCR7 / 発現 / 乳がん / 炎症 |
研究概要 |
近年、新たに同定されたケモカイン受容体RDC1/CXCR7は、乳がんや肺がんなどの腫瘍細胞に発現し、細胞のがん化や増殖に重要な役割を持つことが報告されている。我々はこれまでに、HTLV-1感染およびATL発がんにおけるCXCR7の役割を解析してきた。その結果、その発現にはNFκBが重要であり、抗アポトーシス作用を介してHTLV-1感染T細胞の増殖/生存を促進することを明らかにした。予備実験の結果から、血液・リンパ球系以外のがんではCXCR7の発現が異なっている可能性が示唆されため、本研究では乳がんや炎症反応において、病態特異的なCXCR7の発現制御および機能について検討を行う。 乳がんにおけるCXCR7発現の転写解析については、細胞(組織)特異的な発現の違いを考慮して、乳がん細胞株YMB-1Eを用いて5'-RACE法により転写開始点の同定を行った。その結果、HTLV-1感染T細胞と同様の転写開始点を確認し、クローニングした1109bpのプロモーター領域について転写解析を進めることとした。乳がん細胞においてはCXCR7プロモーターの転写因子により発現制御が異なる可能性が考えられる。今後、長さの異なる欠失変異体および点変異体を用いて、CXCR7発現制御に重要なエレメントの同定を行う。また、炎症反応刺激によるCXCR7発現への影響と受容体および細胞機能について検討する。さらに、リガンドSDF-1/CXCL12を共有するCXCR4との相互作用を含めてCXCR7の受容体機能を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳がん細胞を用いた5'-RACEにより、転写開始点に関する情報と転写因子による細胞特異的発現調節の可能性を示唆する結果が得られた。研究成果は得られたものの、5'-RACEにおけるPCRの条件検討や乳がん細胞株を用いた基礎実験に時間を要したため、研究全体としてはやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
乳がん細胞におけるCXCR7プロモーターの転写因子による発現制御を調べるために、長さの異なる欠失変異体および点変異体を作成し、乳がん細胞株YMB-1EあるいはMCF-7を用いてプロモーター解析を行う。また、炎症時にCXCR7が発現誘導/抑制されるかどうかを、血管内皮細胞(HUVEC)や皮膚角化細胞株(HaCaT)あるいは腎臓上皮細胞株(HEK293T)強制発現系を用いて、IL-1やTNF-αなどの炎症性サイトカインや炎症調節性のTGF-βを添加して検討する。RT-PCRあるいはReal-Time PCRによる発現解析と、フローサイトメーターによる細胞表面発現解析を行う。また、CXCR7特異的低分子アンタゴニストCCX754処理を行い、受容体や細胞機能を検討する。さらに、リガンドSDF-1/CXCL12を共有するCXCR4との相互作用を含めてCXCR7の受容体機能を解析する。CXCR7はmRNA発現レベルが高いにもかかわらず細胞表面の膜タンパク質を発現していない場合が認められる。そのよな細胞内発現においても抗アポトーシス・細胞増殖促進作用等が認められるかどうかについて、CXCR7の内在化と細胞機能に関する研究も行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、おもにプロモーター解析関連試薬、cDNA合成とReal-Time PCR関連試薬、サイトカイン、フローサイトメーター用抗体類の購入に使用する。このほかに、一般的な細胞培養用あるいは遺伝子実験用のディスポーザブルプラスチック器具類や試薬の購入などに使用する。
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