研究課題/領域番号 |
23590377
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鐘ケ江 裕美 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80251453)
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キーワード | アデノウイルスベクター / 遺伝子治療 |
研究概要 |
ヘルパーウイルス依存型アデノウイルスベクター(HD-AdV)は、ベクターに対する免疫原性の少ない長期発現型ベクターとして、遺伝病に対する遺伝子治療などへの有用性が期待されているものの、発現効率がE1置換型ベクターよりも劣っていることも報告されており、この問題を解決することはHD-AdVの遺伝子治療における応用範囲を格段に上昇するだけでなく、例えばゲノムから大きく切り出した細胞特異的プロモーター領域の応用も可能になり、生体内で起こっていることをより忠実に再現することも可能になると考えられることから発生研究などにも有用性が高い。本研究はHD-AdVのサイズを調整するために挿入するスタッファーを最適化すること、HD-AdV化において欠失したウイルスDNA上に存在することが示唆されている目的遺伝子の発現効率に寄与している領域を同定し最適化することにより発現効率を格段に上昇する有用性の高いHD-AdVシステムを構築するとともに、HD-AdVとゲノム領域から切り出した細胞特異的プロモーターを組み合わせた細胞特異的発現ベクターの作製と評価を行うことが最終目的である。 平成24年度は、昨年度までに同定したアデノウイルスDNA上で目的遺伝子の発現効率に寄与しているわずか300bpのDNA領域について解析を加えた。その結果、この領域はタンパク質をコードしていないだけでなく、エンハンサートラップの解析からエンハンサー活性を持たないことを明らかにした。そこでこのDNA領域をHD-AdVに挿入したところ、ヘルパーウイルスとの相同組換えを起こしたことが確認され、逆向きに挿入しこの問題を解決した。現在このDNA領域の発現効率への影響についてHD-AdVを用いて詳細に比較検討を行っている。また、細胞特異的プロモーターを挿入可能なコスミドカセットの調製も行ったため、HD-AdVの作製も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に同定したアデノウイルスDNA上に存在する遺伝子発現効率を上昇するDNA領域について、予定通りにエンハンサートラップやタンパク質発現の確認を行い、エンハンサーではないメカニズムで遺伝子発現上昇効果を示していたことを見いだした。現在機序についての解析を進めているが、細胞側因子の特定には至っていない。しかし、本研究の目的であるHD-AdVの目的遺伝子発現効率上昇効果の検討に関しては、HD-AdV作製時にヘルパーウイルスとの相同組換えが生じるという問題も挿入方向の検討により解決し作製が可能になっており、おおむね順調に推移している。 また、ゲノム由来の細胞特異的プロモーターから目的遺伝子を直接発現するHD-AdV用コスミドカセット及びゲノム由来の細胞特異的プロモーターからCreを発現するスイッチユニットとCre依存的に目的遺伝子発現がONへと誘導される標的ユニットを併せ持つHD-AdV用コスミドカセットの作製が終了しており、既にゲノム由来の細胞特異的プロモーターの挿入を始めており、この面でもおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
目的遺伝子発現上昇DNA領域を応用したHD-AdVの有用性上昇に向けた検討では、アデノウイルスDNA由来の300bpを挿入したHD-AdVを複数作製して、目的遺伝子の発現を詳細に比較検討することにより有用性を実証する。また、この300bpの機序について、細胞内での局在について解析を加えていく。 ゲノム由来の細胞特異的プロモーターについては、現在神経細胞への分化誘導を効率的に行うために複数のプロモーター領域を持つHD-AdVの作製を行っている。直接細胞特異的プロモーターから目的遺伝子を発現した場合には発現効率が低いことが想定されるため、Creを細胞特異的プロモーターから発現するスイッチユニットとCre依存的に目的遺伝子の発現が強力なプロモーターからONへと誘導される標的ユニットを併せ持つHD-AdVの作製に向け、Creに対するshRNAを発現するヘルパーウイルスの調製を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の解析には、細胞特異的プロモーターをクローニングするためのBACクローンの購入、特異性を確認するための発現確認用qPCR用試薬やDNA/RNA抽出キットが必要である。HD-AdVの作製には、一般的な遺伝子工学用試薬、プラスチック製品及び細胞培養用試薬だけでなく、オリゴDNAの合成やシークエンスなどが必須である。また、マウスを用いたHD-AdVの免疫原性の解析を行うためのマウス購入も予定している。 更に、本研究の成果を学会等で発表するための旅費も必要である。
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