ヘルパーウイルス依存型アデノウイルスベクター(HD-AdV)は、ベクターに対する免疫原性の少ない長期発現型ベクターとして、遺伝病に対する遺伝子治療などへの有用性が期待されているものの、発現効率がE1置換型ベクターよりも劣っていることも報告されており、この問題を解決することはHD-AdVの遺伝子治療における応用範囲を格段に上昇する。本研究は、HD-AdV化において欠失したウイルスDNA上に存在することが示唆されている目的遺伝子の発現効率に寄与している領域を同定し最適化することにより発現効率を上昇したHD-AdVシステムを構築するとともに、HD-AdVとゲノム領域から切り出した細胞特異的プロモーターを組み合わせた「細胞特異的発現HD-AdV」の作製と評価を行うことが最終目的である。 最終年度である平成25年度は、昨年度までに同定した目的遺伝子発現上昇に寄与している可能性のあるアデノウイルスゲノム300bp由来のDNAを挿入したGFP発現HD-AdVと挿入していないHD-AdVについてGFPの発現強度を比較した。その結果、同じ感染量では300bpを挿入した方がその差は僅かであったがGFP発現強度が高くなる傾向を示した。また、ゲノムから切り出した細胞特異的プロモーターとしてTyrosine hydoxylase (TH)プロモーターを選びTHプロモーターから部位特異的組換え酵素Creを発現する「スイッチユニット」とCre依存的にCAGプロモーターからGFPを発現する「標的ユニット」を併せ持つ「細胞特異的発現HD-AdV」の構築を行うとともに、このベクターによりドーパミン神経特異的にGFPが発現することを確認した。
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