研究課題
ファンコニ貧血(FA)経路はDNA複製ストレスにより活性化され、その中心タンパク質FANCD2はモノユビキチン化されるが、モノユビキチン化FANCD2の生理的役割は未だ充分に解明されていない。我々は、FANCD2結合タンパク質を探索し、ユビキチン結合ドメインを持つUBR5とUFD1を同定した。1)UBR5とFA経路の機能連関の検討。昨年度樹立したubr5欠損DT40 細胞の表現型解析を行った。Ubr5欠損細胞は、fancd2欠損細胞とは異なり、放射線感受性、ICL薬剤(シスプラチン)感受性をほとんど示さなかった。また、ヒト繊維芽細胞(GM02063)を用いた生細胞イメージングにより、マイクロレーザー照射によるDNA損傷部位へのタンパク質の集積を解析した。FANCD2-GFPは数分で損傷部位への集積が見られるが、同じ条件下でGFP-UBR5の集積は観察できなかった。以上の結果からUBR5とFA経路とは機能的相関が小さいことが示唆された。2)UFD1およびUFD1相互作用分子とFA経路の機能連関の検討。UFD1およびUFD1と複合体を形成するNPL4, p97/VCP、さらにp97との結合が報告されたDVC1について、ヒトHeLa細胞を用い、siRNA法によるノックダウン実験を行った。ウエスタン法により、目的遺伝子のノックダウンが効率よくおこっていることを確認し、コロニー形成法によりMMC感受性を検討したが、いずれのノックダウン細胞も対照細胞に比べ有意な差は見られなかった。また、上と同様にマイクロレーザー照射によるDNA損傷部位へのタンパク質の集積を解析した。FANCD2-GFPの集積がみられた条件下で、GFP-DVC1は損傷部位への集積が観察されたが、FANCD2-GFPと異なる集積パターンを示した。一方、DVC1以外のGFP-融合タンパク質の集積は観察できなかった。以上の結果は、DNA修復において、UFD1, NPL4, p97, DVC1はFA経路とは機能的相関が小さいことを示唆する。
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