研究課題/領域番号 |
23590381
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石田 隆史 広島大学, 医歯薬保健学研究院(医), 講師 (40346482)
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研究分担者 |
石田 万里 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 講師 (30359898)
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キーワード | 酸化ストレス応答 |
研究概要 |
酸化ストレスは心筋の虚血再灌流傷害、動脈硬化などの発症・進展に深く関与しているが、酸化ストレスを標的としたこれら心血管疾患に対する治療は今のところ成功していない。抗酸化分子ヘムオキシゲナーゼ(HO-1)の発現は正の転写因子Nrf2と負の転写因子Bach1のantioxidant response element(ARE)への結合のバランスにより転写を受けている。本研究の目的は、酸化ストレス応答の負のマスター転写因子Bach1をRNA干渉にて発現抑制することにより抗酸化遺伝子を協調的に発現させることが、心血管疾患に対する新たな分子標的治療となりうるか否かをモデル動物を用いて検討することである。 Bach1ノックアウト(KO)マウスにおいては心筋梗塞後の左室重量、左室拡張末期経、線維化が野生型マウスに比して有意に減少していた。このためBach1-KOマウスの心臓における遺伝子発現をマイクロアレイにて網羅的に解析した。その結果、HO-1以外にもいくつか興味深い遺伝子の発現がBach1-KOマウスの心臓において増加していることが明らかとなった。このことから心筋梗塞後のリモデリングにおいて、Bach1に制御されている遺伝子群が保護的に作用している可能性が示唆された。 次にBach1をRNA干渉にて発現抑制することにより下肢虚血が改善するか否か検討するため、アテロコラーゲンを導入担体として用いたところ、siRNA単体よりも有意に良好な導入が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、心筋梗塞モデルにおいてBach1のノックダウンの効果を検討していたが、梗塞範囲のばらつきが大きく、正確に検討できなかった。そこでモデルを下肢虚血モデルに変更した。アテロコラーゲンを用いることにより、Bach1のノックダウンがマウス下肢においてできていることを確認したが、至適な条件(siRNAおよびアテロコラーゲンの量)を絞り込むのに現在時間を要している。今後至適な条件を可及的速やかに決定し実験を進行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
下肢虚血モデルを優先してBach1のノックダウンの効果を検討する。下肢モデルの手技的な安定性は既に得られている。下肢虚血モデルにおけるRNA干渉の至適条件を早急に決定し、本格的に実験を開始する。 下肢虚血モデルに関する検討が終了した時点で時間的に余裕があれば、心筋梗塞モデルにおいても同様の検討を行う。このため心筋梗塞モデルの手技に関しても向上を図っておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
RNA干渉の実験が予備実験の段階でやや遅れたため、H24年度使用額も少なくなった。H25年度は当実験が本格的に始動するため、抗体、免疫組織化学やPCRの試薬、siRNA、アテロコラーゲン、マウスなどに相当額使用する予定である。
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