研究課題/領域番号 |
23590386
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
鬼島 宏 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90204859)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 癌 / 膵臓 / 胆道 / 時計遺伝子 / 血管新生 / 遺伝子制御 |
研究概要 |
難治性癌の代表である膵癌・胆道癌の病態には、癌細胞の上皮間葉転換 (epithelial-mesenchymal transition, EMT) を伴う浸潤性増殖および脈管侵襲を介した転移が関与する。生物時計が制御する概日リズムの下で、癌細胞の浸潤性増殖や脈管侵襲を惹起する血管新生が行われるとの作業仮説に基づき、時計遺伝子の発現に対応した癌細胞増殖・上皮間葉転換・腫瘍血管新生の機序を、培養細胞レベルのみならず、マウス移植モデル系を用いた個体レベルで証明することで、膵・胆道癌における高悪性度の病態を解明する。 研究期間内の目標としては、以下に示す通り、膵・胆道癌の浸潤性増殖と腫瘍血管新生に関わる時計遺伝子の重要性を証明する: 1.ヒト膵・胆道癌の細胞株を用いて、培養細胞レベルおよび個体レベルで、時計遺伝子発現の意義を解明する。このために、培養細胞レベルでは高濃度血清刺激による細胞同調を用い、マウスモデル系では概日リズム下飼育により、ヒト膵・胆道癌細胞の高悪性度形質に関わる時計遺伝子の発現解析を行う。対象とする時計遺伝子は、我々が機能解析を行ったDEC遺伝子にとどまらず、CLOCK, BMAL, PER, CRYなどの時計遺伝子も含む。 2.時計遺伝子の制御下での膵・胆道癌の増殖機構を明らかにするため、概日リズム環境における (1) 時計遺伝子タンパク質発現と、細胞増殖因子・血管新生因子との相互作用を探索し、(2) 培養細胞における時計遺伝子と浸潤性増殖・上皮間葉転換 (epithelial-mesenchymal transition, EMT) との関連、(3) ヌードマウス移植腫瘍における時計遺伝子と浸潤性増殖・腫瘍血管新生の関連を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト膵・胆道癌の培養細胞株を用いて、培養細胞レベルで時計遺伝子発現の意義を明らかにする。対象とする時計遺伝子の発現検討は、我々が機能解析を行ったDEC遺伝子 (DEC1, DEC2) にとどまらず、CLOCK, BMAL, PER, CRYといったその他の時計遺伝子を含めた。 1.生物時計が刻む概日リズム解析は、培養細胞レベルでは同調因子として、高濃度 (50%) 血清刺激を用いた。ヒト癌細胞株に高濃度血清刺激を与えて、個々の細胞のリズムを同調させることにより、概日リズムを誘導させ、各種の時計遺伝子の概日リズム発現の変動を、リアルタイムPCR、ウエスタン・ブロット法で解析する。機能発現の高い時計遺伝子を明らかにした。さらに、癌細胞の上皮間葉転換を解析する前段階として、癌間質に相当するヒト骨髄由来間葉系幹細胞 (hMSC) における概日リズム発現の変動を検討した。 2.膵・胆道癌細胞における時計遺伝子と血管新生遺伝子との関連の解析を始めた。癌細胞における代表的な血管内皮増殖因子である、vascular endothelial growth factor (VEGF) に加えて、HIF (hypoxia-inducible factor)-1 の概日リズム発現ならびに時計遺伝子発現との関連を検討した。 培養細胞レベルでの研究は計画以上に順調に解析が進んだ一方で、マウスモデル用いた個体レベルでの解析が十分に行えなかった。総合として、おおむね順調の研究進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、ヒト培養細胞株を用いて、細胞レベルでの時計遺伝子発現の意義の一端を明らかにすることができた。このため、平成24年度は培養細胞レベルでの研究をさらに進展させることに重点を置きたい。一方で、平成23年度はマウスモデル用いた個体レベルでの解析が十分に行えなかったことを反省し、平成24年度以降はできる限り速やかに、個体レベルでの解析が行えるよう研究環境整備して、研究推進に努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は予定通りの研究費使用が行えた。平成24年度以降も、研究内容が、マウス移植モデル系による個体レベルよりもヒト培養細胞株を用いた細胞レベルに重点が置かれるが、おおむね当初の計画通りの研究費使用を行いたい。
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