研究概要 |
難治性癌の代表である膵癌・胆道癌の病態には、癌細胞の上皮間葉転換 (epithelial-mesenchymal transition, EMT) を伴う浸潤性増殖および脈管侵襲を介した転移が関与する。本研究では、生物時計が制御する概日リズムの下で、癌細胞の浸潤性増殖や脈管侵襲を惹起する血管新生が行われるとの作業仮説に基づき、時計遺伝子の発現に対応した癌細胞増殖・上皮間葉転換・腫瘍血管新生の機序を、in vivoマウス移植系を用いた個体レベルで証明することで、膵・胆道癌における高悪性度の病態を解明する。 膵・胆道癌の浸潤性増殖と腫瘍血管新生に関わる時計遺伝子の重要性を個体レベルで証明する。 (1)ヒト膵・胆道癌の細胞株を用いて、培養細胞レベルおよび個体レベルで、時計遺伝子発現の意義を解明する。このために、培養細胞レベルでは高濃度血清刺激による細胞同調を用い、マウスモデル系では概日リズム下飼育により、ヒト膵・胆道癌細胞の高悪性度形質に関わる時計遺伝子の発現解析を行う。対象とする時計遺伝子は、我々が機能解析を行ったDEC遺伝子にとどまらず、CLOCK, BMAL, PER, CRYなどの時計遺伝子も含む。 (2)時計遺伝子の制御下での膵・胆道癌の増殖機構を明らかにするため、概日リズム環境における (a) 時計遺伝子タンパク質発現と、細胞増殖因子・血管新生因子との相互作用を探索し、(b) 培養細胞における時計遺伝子と浸潤性増殖・上皮間葉転換 (epithelial-mesenchymal transition, EMT) との関連、(c) 腫瘍組織における時計遺伝子と浸潤性増殖・腫瘍血管新生の関連を解析する。
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