研究課題/領域番号 |
23590389
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
太田 聡 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90324342)
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キーワード | メルケル細胞ポリオーマウイルス / 皮膚腫瘍 / リンパ増殖疾患 |
研究概要 |
千葉大学医学部附属病院にて切除された腫瘍性病変のうち、頭頸部や日光露出部に頻度の高い皮膚腫瘍や比較的皮膚に近い頭頸部腫瘍を主体に検討した。これまでの検討で、メルケル細胞ポリオーマウイルスの感染の有無を組織レベルで検出する最も簡便な方法は、病理組織検体を用いた免疫組織化学によることがわかっている。また当初このウイルスが発見されるきっかけになったメルケル細胞癌の陽性率は高いが、この腫瘍以外での検出率は、諸家の報告からも低い。そのため検討する腫瘍の種類、症例数はできる限り多くの症例数を検討することとした。 千葉大医学部附属病院でのメルケル細胞癌は7例あり、そのうち4例が免疫組織化学による検討で陽性になった。陽性率は57%と、これまでの東京大学医学部附属病院や虎の門病院での症例を用いた検討での9例中8例陽性(78%陽性)と比較してやや低いが、これまでの諸家の報告の陽性率の範疇に収まる結果であった。他の皮膚腫瘍は、東京大学医学部附属病院での症例で検討した疾患である光線性角化症22例、ボーエン病16例、基底細胞癌60例、悪性黒色腫14例をさらに加え、かつ他の病変として血管肉腫10例、リンパ腫(濾胞性リンパ腫6例と血管内大細胞リンパ腫2例)、毛包上皮腫11例、木村病13例を追加し検討した。今回の検討では腫瘍細胞自体はいずれも陰性であった。腫瘍部またはその周囲の領域の背景細胞としてのリンパ球に陽性像が観察された症例が、光線性角化症2例、ボーエン病2例、基底細胞癌3例、悪性黒色腫1例、毛包上皮腫1例になった。さらに、リンパ増殖病変としては濾胞性リンパ腫6例中5例、木村病13例中8例が陽性になった。 腫瘍領域のおけるリンパ球中のウイルスは、局所的な免疫低下状態におけるウイルス感染細胞の再活性化が原因と考えられており、メルケル細胞ポリオーマウイルスの腫瘍化おにおいても今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メイルケル細胞ポリオーマウイルスの腫瘍関連性に関しては未だほとんどわかっていない。多くの疾患、症例、特に原因不明とされている、稀な病変に関しても検討を広げることにより新たな方向性を生み出すことができるのはないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚腫瘍をはじめとした様々な病変でのポリオーマウイルスの関与がいかなるものであるかを解明することが当初の目標である。さらには今回観察された、背景リンパ球におけるポリオーマウイルスの関与、特に非常に多くの細胞で観察された、低悪性度リンパ腫の一つである濾胞性リンパ腫、原因のわかっていない病変である木村病への関与は非常に興味深く、併せて検討していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
皮膚腫瘍または頭頸部腫瘍を主体に解析をしているが、今後病変数、症例数も増やし、どのような病変にポリオーマウイルスが関与しているのか検討する。症例数の準備や、染色条件再検討に時間を要し、未使用額が生じたが、今後精力的に症例を検討する。 リンパ増殖病変のついては、感染細胞の同定や、その分布の検討をする。 また、上記の症例に関して、ウイルすコピー数解析、ウイルスの変異部の解析を計画している。
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