千葉大学医学部附属病院にて切除された腫瘍性もしくは腫様様病変における解析を継続して施行した。昨年度までの症例と合わせるとメルケル細胞癌7例、光線性角化症22例、ボーエン病44例、基底細胞癌112例、悪性黒色腫29例、血管肉腫10例、リンパ腫(濾胞性リンパ腫6例と血管内大細胞リンパ腫2例)、毛包上皮腫11例、木村病13例と皮膚腫瘍主体に症例数を増やし検討した。 メルケル細胞癌以外では、腫瘍細胞自体はいずれも陰性であった。腫瘍部またはその周囲の領域の背景細胞としてのリンパ球に陽性像が観察された症例が、光線性角化症2例、ボーエン病5例、基底細胞癌8例、悪性黒色腫3例、毛包上皮腫1例で、リンパ増殖病変としては濾胞性リンパ腫6例中5例、木村病13例中8例が陽性になった。集塊状の陽性像は木村病と濾胞性リンパ腫であった。 木村病で特徴的な好酸球浸潤近傍のリンパ濾胞間のリンパ球に高率にメルケル細胞ポリオーマウイルス陽性細胞の集簇が見られ、リンパ濾胞部やマントル層にはごくわずかに観察されるのみである。木村病の組織像の特徴であるリンパ濾胞胚中心の好酸球膿瘍形成部では、濾胞胚中心に陽性細胞が多数観察される。木村病の特徴である好酸球の分布と同じく、メルケル細胞ポリオーマウイルス陽性細胞が観察されることは、病態形成に関わっている可能性を示唆する。さらにこのメルケル細胞ポリオーマウイルス陽性リンパ球のサブセット解析を、リンパ球マーカーを用いて検討した。CD3陽性でT細胞と考えられる。その他のマーカーとしてはCD5陽性、CD4陽性、CD8陰性、CD10陰性、Bcl-6陰性、GranzymeB陰性、TIA1陰性であった。木村病の背景リンパ球に観察される、ポリオーマウイルス陽性細胞はCD4陽性のヘルパーT細胞であることがわかった。今後その病変形成への関与について解析する予定である。
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