研究課題
原発性胆汁性胆管硬変(PBC)はピルピン酸脱水素酵素(PDC)を対応抗原とするミトコンドリア抗体(AMA)の出現、また肝内小型胆管における慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)と胆管消失が特徴である。PDC複合体は解糖系エネルギー代謝の重要な酵素であるが、PDC活性は種々の分子によって制御されている。peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1α (PGC-1α)/estrogen-related receptor α (ERRα)はpyruvate dehydrogenase kinase, isozyme 4 (PDK4)の誘導によりPDC-E1αのリン酸化を介してPDC活性を阻害し、脂肪酸分解系へのエネルギー代謝へと誘導する分子である。我々は胆管障害の組織発生と細胞内エネルギー代謝との関連性について検討した結果、PBCのCNSDCではPGC-1α, ERRαの核発現を特異的に認めたが、PBCの正常胆管や対照疾患の胆管では核発現を認めなかった。また、PDC-E1α, PDK4は、PBCおよび対象疾患の胆管で恒常的に発現していたが、特にPBCのCNSDCで発現が亢進していた。培養ヒト胆管細胞は血清減量により、PGC-1αに加えてPDK4のmRNA発現も亢進した。さらに、PDK4およびPDH蛋白の発現亢進が見られたが、PDH活性は低下した。以上の結果より、PBCの障害胆管では、PGC-1α/ERRα系を介した解糖系エネルギー代謝の障害が誘導されていることが示唆された。また、PGC-1α/ERRα機構により脂肪酸分解系のエネルギー代謝が誘導されている可能性もある。PBCの障害胆管では通常の胆管とは異なるエネルギー代謝へ変化しており、PBC特異的な胆管病変の形成の発生に関与している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に準じて、研究が遂行されており、原発性胆汁性肝硬変の胆管障害機序の一端が明らかになりつつある。現時点での研究成果は現在欧米誌に論文投稿中であり、順調に本研究は達成されていると自己評価している。
今後の研究課題としては、原発性胆汁性肝硬変の胆管におけるエネルギー代謝の異常と胆管障害および胆管消失との関連性を検討する必要があり、アポトーシスおよびエストロゲン受容体(ER)およびERRαとの相互作用の観点から検討する予定である。
次年度の研究費は、すべて消耗品の購入に充てる予定である。
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