研究課題/領域番号 |
23590395
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
瀧北 幹子 (鈴木 幹子) 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (90335167)
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研究分担者 |
茶野 徳宏 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (40346028)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | tissue microarray / biomarker / autophagy / RB1CC1/FIP200 / p62/SQSTM1 |
研究概要 |
肺癌手術症例を含むTMA(tissue microarray)を用いてautophagyに関与するRB1CC1とp62の免疫染色を施行し、腫瘍細胞の細胞質および核における染色態度のスコアリングを行った。RB1CC1の核内発現は腫瘍抑制に関与していると考えられ、乳癌においてはその発現の増加が臨床的予後の良好なことを示唆する。しかし肺癌ではRB1CC1の核内発現率が低く腫瘍抑制的には機能しておらず、このことよりRB1CC1は組織依存性のバイオマーカーである可能性が示唆された。一方、RB1CC1の細胞質内発現はオートファジーの制御に必須と考えられている。肺癌ではRB1CC1が細胞質で発現しており、予後不良化と関連している可能性が考えられた。次にautophagy障害細胞で蓄積するp62の発現を検討したところ、RB1CC1およびp62が共発現している群は他に比べて5年生存率は不良であった。p62の発現を陰性、弱陽性、強陽性に分けて評価したところ、p62強陽性群では5年生存率が最も不良となり、これにはautophagyの障害が関与している可能性が考えられた。しかし、p62陰性群よりもp62弱陽性群の方が5年生存率が良好であったため、p62の発現を抑制しRB1CC1の発現にも関与する別の因子が作用している可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌手術症例から成るTMAを用いて免疫染色を行い、autophagy 関連蛋白であるRB1CC1/FIP200およびp62/SQSTM1が肺癌の予後予測に役立つバイオマーカーとなりうることを明らかにした。またp62/SQSTM1の発現を抑制しRB1CC1の発現にも関与する別の因子が作用している可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
p62の発現を抑制しRB1CC1の発現にも関与し、肺癌の臨床予後を示唆し得る因子の候補を絞り込み、その発現をTMAを用いて調べRB1CC1、p62、そして、肺癌症例の臨床経過との関連を検討する。免疫染色の結果をより客観的に評価するために、画像解析装置を用いて分析し鏡検との結果と比較する。組織提供者の臨床情報と併せて統計学的な検索を施行し、これらautophagy関連蛋白分子発現が肺癌の有用なバイオマーカーとなりうるかを検討する。また、肺癌患者のp62蛋白の血清学的検出を目的としてELISA法の確立をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
肺癌の新規バイオマーカー候補となる分子の解析、免疫組織学的検討を行うための試薬などを購入する。海外共同研究者(Dr. Stephen Hewitt, National Cancer Institute in US)と共同で、画像解析装置を用いた病理組織の客観的定量解析を施行するため、標本を海外に輸送する送料が必要である。 一方で、p62蛋白の血清学的検出を目的としてELISA法の系を確立するために、一般試薬・酵素、臨床検体解析試薬、細胞培養諸製品の購入費ならびに抗体・核酸試薬準備費用として使用する予定である。
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