研究課題/領域番号 |
23590397
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
横崎 宏 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10200891)
|
キーワード | 病理学 / 癌 / 食道 / マクロファージ / 癌・間質相互作用 |
研究概要 |
本研究では食道扁平上皮癌の発生・増殖・進展におけるM2マクロファージ(MΦ)/癌細胞相互作用を臨床検体ならびに培養系を用いて解析し、分子病態における意義を明らかにするとともに、早期病変の正確な病理組織診断に応用することを目的とする。本研究計画では、浸潤性食道扁平上皮癌へのM2 MΦ浸潤と臨床病理学的要因の相関解析【研究1】、食道扁平上皮癌細胞とM2 MΦの細胞生物学的相互作用の解析【研究2】、食道上皮内腫瘍形成におけるM2 MΦの役割の解明と病理診断への応用【研究3】を平行して行う。平成24年度は研究1のまとめと前年度研究2マイクロアレイ解析で抽出された候補遺伝子の機能解析を行うとともに、【研究3】の一部に着手した。 【研究1】前年度解析した食道癌78例から、長期予後情報が得られた70例を選別し、血管新生、予後を含めた臨床病理学的因子の相関を解析したところ、腫瘍関連MΦ密度と微小血管密度、CD204陽性M2 MΦ浸潤密度と壁深達度、脈管侵襲、リンパ節転移、臨床病期および再発予後が有意な相関を示すことを明らかにした。 【研究2】TPA処理単球由来細胞THP-1に食道癌細胞培養上清を作用させるとCD204とVEGF-Aが特異的に誘導された。食道癌の微小環境内は浸潤MΦをCD204陽性M2分化させるとともにVEGF-A誘導による血管新生促進作用がある事が示唆された。マイクロアレイ解析によりM2MΦに分化したTHP-1で特異的に発現誘導される遺伝子の内IL-11, IL-24, flt-3, CYR61について細胞生物学的解析を実施中である。また、健常人末梢血単球由来MΦも食道癌細胞培養上清によりM2MΦに分化することを明らかにし、分化過程でのマイクロアレイ解析から特異的発現誘導遺伝子群を抽出した。 【研究3】食道癌5例全割標本粘膜内M2 MΦ分布ヒストグラムを作成した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究1に関しては十分量の症例数を収集が完了し、M2MΦの浸潤と食道扁平上皮癌の増殖、進展に一定の相関関係を得た。 研究2に関しては食道癌細胞培養上清によりTPA処理単球性白血病由来細胞THP-1にM2形質および血管新生因子発現亢進が誘導されることが見いだされ、研究1の成果とともに論文を1報まとめ、現在投稿中である。また、食道癌細胞培養上清で特異的に発現亢進する遺伝子からIL-11, IL-24, flt-3, CYR61の機能解析が進行中である。さらに、健常人末梢血単球由来MΦも食道癌細胞培養上清によりM2分化することを明らかにし、分化過程でのマイクロアレイ解析から特異的発現誘導遺伝子群を抽出し、現在解析中である。 研究3に関しては研究1,2出得られた成果を元に研究の基盤となる食道粘膜内でのM2MΦ分布ヒストグラム作成を完了した。
|
今後の研究の推進方策 |
【研究2】食道扁平上皮癌細胞とM2MΦの細胞生物学的相互作用の解析 1)癌細胞と分離培養MΦの三次元共培養を試みる。Green fluorescein protein (GFP)発現ベクターを導入し蛍光標識した食道扁平上皮癌細胞を、健常成人末梢血単核細胞より分離誘導したMΦの存在、非存在下に共培養後コラーゲンゲルを重層し、癌細胞のゲル内への浸潤や細胞数の変化を共焦点レーザー顕微鏡下に経時的に観察する。 2)GFPを指標に共培養後の食道癌細胞を分離、非共培養食道癌細胞に比して発現変化する遺伝子をcDNAマイクロアレイにて網羅的に解析し、抽出された癌細胞/MΦ相互作用で発現変化する遺伝子産物の癌細胞の増殖・運動・浸潤や血管新生、細胞外基質リモデリングなど癌微小環境に対する影響を検討する。 【研究3】食道上皮内腫瘍の増殖と異型血管形成におけるM2MΦの役割 1)研究2のアレイ解析で抽出された癌細胞/MΦ相互作用で発現変化する遺伝子産物の食道上皮内腫瘍における発現を免疫組織化学的に解析し、食道上皮内腫瘍の特徴的形態学的構築である上皮細胞増殖と異型血管形成に主たる役割を演ずる因子群を特定する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
|