研究課題
平成23年度実施分肝内胆管癌の発癌・転移におけるiNOS、COX2発現の役割の検討 酸化ストレスが関わる経路において重要であり、発癌や腫瘍の増殖にも深く関与していると言われているinducible nitric oxyside (iNOS)とcyclooxygenase (COX2)発現を検討した。対象とする肝内胆管癌137例と胆管乳頭状腫瘍20例、胆管癌前駆病変のBiliary intraepithelial neoplasia40例、胆管癌リンパ節転移巣(LN)27例にを抽出し、ポリマー法による免疫組織化学染色にてそれぞれの病変における蛋白発現を陰性;<10%、陽性>=10%と評価し、臨床病理学的に解析した。 その結果、反応性胆管上皮(n=16)とBilINでは、iNOS、COX2いずれも60%以上の症例で陽性であったが、異型度別にはBilIN2の陽性率が低めであった。IPNBでは非浸潤癌(n=12)においてiNOSは5例、COX2は6例が陽性であったが、浸潤癌(n=5)ではiNOSは1例、COX2は3例が陽性であった。ICCにおいて、iNOSは29%に陽性、COX2は42%に陽性であり、iNOS陰性群とCOX2陽性群ではリンパ管侵襲例とリンパ節転移例が高率に見られ、COX2発現はVFGF-C発現と正の相関を示した。リンパ節転移巣ではiNOSは22%が陽性であったのに対し、COX2は93%が陽性であり、COX2陽性群は予後不良であった。
2: おおむね順調に進展している
年度前半は3解析のための対象症例選択を中心に行い、臨床データの収集と病理組織学的因子のデータベース作製に費やした。次年度以降もこのデータベースに基づき臨床病理学的解析を進めていく。年度後半は、胆管がんの発癌と転移における酸化ストレスの与える意義についてiNOSとCOX2蛋白発現について検討した。発現解析のための染色条件設定は比較的スムーズに進んだ結果、病理学的データとの比較検討が可能であり、当初予想した仮説に近い結果を得ることができた。
1)発癌における胆汁酸および胆汁酸受容体Farnesoid X Receptor (FXR)の役割の検討慢性胆管炎や慢性肝炎などで胆汁酸が胆管上皮におよぼす影響を調べるため、ヒト組織標本(慢性胆管炎、前癌病変、癌組織)を用いてFXR蛋白発現、mRNA発現を解析する。さらに胆管細胞株4種(HUCCT1, RBE, SSP25, Huh28)を用いて、抱合型、非抱合型胆汁酸の刺激によるiNOSとCOX2発現を、またFXRが抑制的に働くNF-κBについて調べる。細胞株のFXR発現を調べ、発現株があればFXRのSiRNAによるノックダウンにより起こる変化も解析する。2)ヒト組織標本にてGlut family (Glut1-3)発現の検討これまでGlut1発現について肝外胆管癌で31%(38/121)、膵癌で58%(38/67)との報告があり、肝内胆管癌では26例の検討で81%の発現があると報告されている(Paudyal B, et al. Cancer Sci 2008)。したがって胆管癌の部位による違いがあることが予想される。さらに、胆管癌細胞株を用いて、Glut1-3の発現を検討し、発現亢進例に対してSiRNAによる細胞増殖能の変化をイムノアッセイキットで検出し、浸潤能の変化をinvasion assayで解析する。
平成23年度同様に、年度前半に物品費として使用する予定。対象物品はすべて50万円以下のものであり、蛋白発現解析に利用する1次抗体、2次抗体、発色キット、培養細胞を使用した機能解析のための培地、試薬類、ピペット等に使用する。
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