研究課題/領域番号 |
23590400
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中野 敏昭 九州大学, 大学病院, 助教 (10432931)
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研究分担者 |
鬼丸 満穂 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00380626)
鶴屋 和彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20372740)
谷口 正智 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60419562)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 血管新生 / 動脈硬化 / 慢性腎臓病 |
研究概要 |
(1)動脈硬化病変における血管新生因子(VEGF family)の役割ApoE欠損マウスに対して、組み換えヒト蛋白VEGF-A、VEGF-C、PlGF、VEGF-C 156S、を2μg/kg連日3週間腹腔内投与したところ、VEGF-A群およびVEGF-C群においてコントロール群(PBS)と比べて大動脈起始部において、有意な内腔狭窄率の上昇、マクロファージの浸潤を認めた(p<0.01)。続いて、骨髄由来の内皮前駆細胞や単球/マクロファージの動員を検討するために、血中の内皮前駆細胞およびVEGF受容体1陽性単球、VEGF受容体3陽性単球の数をFACSを用い測定したが、VEGF-Aおよび-Cの投与にて一部増加を認めたが、単球全体の増加には有意差を認めなかった。これらのことから、VEGF-AおよびVEGF-Cによる粥状硬化進行の機序には、血中からのEPCや単球の動員を介さずに、直接的に動脈硬化巣に対して影響を与えることが推定された。(2)ヒト動脈硬化巣における慢性腎臓病による動脈硬化伸展の機序375標本の冠動静脈について、糸球体濾過値(GFR)別に4群に分けて検討した。腎機能が低下するに従って、動脈硬化進行病変の頻度、石灰化の頻度は増加した(p<0.01)。また、血管内膜内の酸化LDL陽性面積やマクロファージ陽性面積は、GFRの低下とともに有意に増加した(p<0.01)。冠状動脈内膜内の新生血管数を測定したところ、eGFR 60以上、45-59、30-44、30未満の各群における新生血管数の平均は、それぞれ10.7、11.8、18.7、23.5であり腎機能低下により有意に増加した。これらのことから、慢性腎臓病患者の動脈硬化病変には、酸化LDLの沈着、慢性炎症の促進が認められるため、動脈硬化病変は進行しやすい環境にあり、病的血管新生によるプラーク破裂の危険も高くなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由)ApoE欠損マウスにおけるVEGF-Cによる動脈硬化増悪に関しては、論文作成段階であり、今後、論文投稿後に追加実験を行う。ヒト動脈硬化巣における慢性腎臓病による動脈硬化伸展の機序に関しても、現在論文作成段階であり、今後、論文投稿後に追加実験を行う。腹膜透析患者における非機能的血管新生による腹膜劣化の検討に関しては、現在、腹膜組織における各種免疫染色を行っており、順次解析中である。全体としては計画通り順調に経過している。論文作成の点において遅れをとっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題に関しては順調に遂行しており、順次、論文作成を行っている。今後は、課題の継続および論文投稿後の追加実験を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
ApoE欠損マウスにおけるVEGF-Cによる動脈硬化増悪に関しては、論文投稿後に追加実験を行う予定である。慢性腎臓病患者の冠状動脈硬化進行に関しては、論文作成中であり、石灰化関連因子(osteocalcin, fetuin-A)の追加実験を検討している。腹膜透析患者の腹膜における血管新生因子の影響について検討するために各種免疫染色(CD34, podoplanin, αSMA, VEGF-A, PDGF-BB)を行っており、順次解析を行う予定である。また腹膜における血管新生関連遺伝子のmRNAの発現も同時に解析する。患者血清からの血管新生因子蛋白量定量の解析も行う。
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