研究課題
血管新生因子による血管障害の研究として、久山町剖検症例126例を用いて、冠状動脈病変と慢性腎臓病の関係について検討した。以前の我々の報告の通り、慢性腎臓病の進行と冠状動脈の動脈硬化進行病変の頻度との間には、有意な相関を認める。これらの冠状動脈375症例について、免疫染色法にて動脈硬化巣の変化を検討した。腎機能の低下に従い、動脈硬化巣内の酸化LDLの沈着、マクロファージの集簇は亢進した。また、血管内に病的な新生血管を多数認め、動脈内膜内出血の増加を認めた。これらは、腎機能の低下に伴い有意に増加し、多変量調整後も有意であった。このことから、慢性腎臓病は、動脈硬化巣における病的血管新生と内膜内出血を促進する可能性が考えられた。また、病的血管新生モデルとして、腹膜透析患者の腹膜について検討した。腹膜透析患者61症例について、毛細血管の増生(免疫染色にてCD34陽性、αSMA陰性血管)と腹膜機能(D/PCr)との関係を検討したところ、両者には強い相関性を認めた(P<0.01, rho=0.699)。また、毛細血管の増生と終末糖化産物(AGE)の組織内沈着との間に有意な相関を認めた。このことから、長期腹膜透析が毛細血管の増生(病的血管新生)に影響し腹膜の劣化につながる可能性が考えられた。上記、2つの病態から、毛細血管の増生による未熟な血管新生が、動脈硬化巣の増悪や腹膜機能の劣化につながることか明らかとなった。これらの毛細血管の増生を抑制する治療法の開発が検討される。リンパ管新生と間質線維化との関係について、腎尿細管間質線維化モデルであるマウス片側尿管結紮(UUO)モデルにて検討した。組み換えVEGF-C蛋白をUUOモデルに投与すると、腎間質リンパ管新生の増加と、間質線維化の抑制を認めた(P<0.01)。このことから、リンパ管新生は、間質線維化を抑制する効果があることが示唆された。
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Kidney International
巻: 84 ページ: 373-380
10.1038/ki.2013.111.