研究課題
膵癌を含む様々な癌細胞において,細胞間接着装置であるタイト結合分子が正常細胞と異なる発現形態をとっていることが報告され,新たな診断・治療に対する標的として注目されている.膵癌ではPKCαの活性化が明らかになっているが,膵癌のEMTへのPKCシグナルの関与やタイト結合の変化についての詳細はいまだ不明である.そこで今回我々は,膵癌細胞株および正常膵管上皮細胞を用いて,Transforming growth factor-β (TGF-β) および低酸素で誘導したEMTに対するPKCα阻害剤の効果をタイト結合蛋白であるclaudin-1の変化を指標に解析を行った。結果1) 膵癌細胞では,正常膵管上皮細胞に比較してPKCαが高発現であった.2) PKCα阻害剤により,膵癌細胞のclaudin-1,occludin の増加,EMT誘導転写因子Snailの低下を認めた.正常膵管上皮細胞ではclaudin-1,claudin-4,claudin-7,occludinの発現亢進を認め,バリア機能が増加した.3) PKCα阻害によるタイト結合分子の変化は,膵癌細胞では一部mitogen-activated protein kinase (MAPK) 経路を介していた.正常膵管上皮細胞では,多くの細胞内シグナルがタイト結合分子の変化に関与しており,膵癌細胞とのシグナルの相違を認めた.4) TGF-β,低酸素環境によるEMT誘導により,膵癌細胞ではclaudin-1の低下及びSnailの増加を認め,その変化はPKCα 阻害剤で抑制された.正常膵管上皮細胞においても,TGF -βによる変化はPKCα阻害剤で抑制された.5) 高分化型膵癌細胞株では,TGF-βによるバリア機能の低下・フェンス機能の破綻は,PKCα阻害剤により抑制された.
2: おおむね順調に進展している
平成24年度に実施する実験においては、ほぼ終了し有意義な結果を見出すことができた。
ヒト正常膵管上皮細胞と膵癌細胞株を用いて、膵癌の発癌過程に密接な関与が知られているK-rasの変異とタイト結合分子との関係を詳細に解析する。
消耗品費(抗体、培養器具、蛋白およびRNA解析用試薬、形態観察用試薬、機能解析試薬など):70万円、旅費(国内学会):5万円、その他(材料費):5万円
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (11件)
Med Mol Morphol
巻: 46 ページ: 203-209
10.1007/s00795-013-0024-1
Carcinogenesis
巻: 34 ページ: 1232-1243
10.1093/carcin/bgt057.
Biomed Res Int
巻: 印刷中 ページ: -
Cell Tissue Res
巻: 351 ページ: 73-84
Ann N Y Acad Sci
巻: 1257 ページ: 85-92
Expert Opinion on Therapeutic Targets
巻: 16 ページ: 881-887
Prostate
巻: 72 ページ: 351-360
Clinical & Experimental Allergy
巻: 42 ページ: 218-228
J Clin Pathol
巻: 65 ページ: 431-436
Laryngoscope
巻: 122 ページ: 1185-1192
J Drug Deliv
巻: 2012 ページ: 245835
Cancer Sci
巻: 103 ページ: 1356-1362
Histochem Cell Biol
巻: 138 ページ: 323-338
Am J Rhinol Allergy
巻: 26 ページ: 433-438