研究課題
本研究では、濾胞ヘルパーT細胞(Tfh細胞)の新たな機能制御システムを探り、もって抗体産生機構や濾胞胚中心形成あるいは特異抗体が関わる感染症、免疫病態との関連を見出すことを目的としている。本研究の推進により、ヒトTfh細胞におけるPOU2AF1(BOB1、OBF1)の発現を、遺伝子レベルと蛋白レベルで明らかにすることができた。POU2AF1は、octamer motifに結合するOCT1/2と会合し、様々な遺伝子の発現を調節している。POU2AF1遺伝子欠損マウスはB細胞分化が障害されて、特異的な抗体産生が生じないことが知られている。このマウスを外来抗原で免疫すると、脾臓のTfh細胞は野生型よりも多く検出され、一方で血液中のTfh細胞は低く検出された。このことから、POU2AF1は免疫組織で分化した後の、血流への移行に関与している可能性が示唆された。OT-IIを発現するPOU2AF1欠損マウスからOT-II Tfh細胞を得て、OVAぺプチドの存在下、野生型B細胞と共培養すると、コントロールと同等のコロニー形成能を示していた。またPOU2AF1遺伝子欠損マウスのTfh細胞は、コントロールのTfh細胞と比べて、IL-21、CXCR5、PD-1、BCL6などの主要な機能マーカー分子の発現に関し、優位な差を認めなかった。したがって、B細胞を刺激する機能は、POU2AF1に影響されない可能性がある。加えて、以前我々はアラキドン酸5-リポキシゲナーゼ(ALOX5)関連脂質メディエーターがTfh細胞の機能分化に影響していることを報告したが(AJP 2011)、ヒト扁桃リンパ球を用いた解析から、リポキシンA4がTfh細胞の初期分化に関与する実験事実を得た。このように本研究によって、局所におけるTfh細胞の初期分化、さらには局所のTfh細胞の応答が全身へ波及するしくみの一部が解明された。
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doi: 10.1111/pin.12099.
臨床免疫・アレルギー科
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