研究課題/領域番号 |
23590406
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古屋 充子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10361445)
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研究分担者 |
田中 玲子 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (60143319)
青木 一郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00184028)
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キーワード | 炎症性微小環境 |
研究概要 |
子宮内膜症合併卵巣癌(endometriosis-associated ovarian cancer; EAOC)をモデルに,発癌段階のIFN-γ誘導性ケモカイン受容体CXCR3のバリアントに着目し、CXCR3応答軸破綻が引き起こす病態を解明してきた. これまでの研究から, IFN-γとCXCR3は炎症疾患である子宮内膜症のみならず卵巣癌でも発現が亢進していることを示したが、まずヒト内膜症とEAOCにおいて3種類のCXCR3バリアントが存在することをシークエンス解析から証明した。次にそれらの発現を比較したところ, CXCR3-BがEAOCでは抑制されていることがわかった. CXCR3-Bに対応するリガンドを検討したところ、CXCL4がEAOCでは抑制されていた. この状態がEAOC発癌段階に有意な相関を示すかどうかを解明するため単嚢胞中に発癌するEAOCを用いて内膜症部分、境界部分、癌部におけるCXCL4を検討した。その結果、CXCL4は段階的に悪性部分で減少し、その発現細胞がマクロファージであることを突き止めた (Furuya M, et al. Cancer Biol Ther, 13:671-80, 2012). 病変部におけるCXCL4抑制の原因となっているマクロファージの特徴を免疫染色で検討した. 内膜症ではCD68 (+) CXCL4 (+) マクロファージが主体であるのに対しEAOCではCD163 (+) CXCL4 (-)マクロファージが主体であった. さらにQ-PCRと免疫染色から、IFN-γ高発現EAOC症例においてsuppressor of cytokine signaling 1 (SOCS1)が減弱していることを発見した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
癌部の浸潤マクロファージの特徴の一つとして, 過去に様々な悪性疾患で報告されているCD163 (+)が重要であることが組織学的に確認された一方, まだ関連のよくわからないSOCS1も関与している可能性が出てきた。 このため、マクロファージの機能がM1からM2にシフトする過程が病変部で限局性に起こっているのか、循環末梢血中でも捉えることができるかどうかを明らかにする必要が出てきた。 またIFN-γ高発現状況下でSOCS1の発現を負に調節する機構があると予想され、その分子を同定する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
多数例でSOCS1の発現を定量的に解析し、統計学的にSOCS1が癌で有意に発現低下していることを証明する (western blot, Q-PCR)。 SOCS1の発現低下に関与する分子同定を行う。いくつかのmiRNAを候補分子として検討している。 末梢血中のマクロファージの多染色により、CD14(+) monocyteにCXCL4, SOCS1などの発現が認められるデータをもとに、病変部の単核球を分離し、短期培養によってその発現分子の特徴を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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