研究課題/領域番号 |
23590408
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
桑江 優子 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 病院講師 (50597557)
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研究分担者 |
梯 アンナ 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60382222)
若狹 研一 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60158574)
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キーワード | 浸潤性膵管癌 / 早期診断 / バイオマーカー / プロテオーム |
研究概要 |
本研究は入手しやすい手術時のホルマリン検体を用いてヒト浸潤性膵管癌の早期発見に有用なバイオマーカーの発見と、発がんのメカ ニズムの解明を目的としている。 最初に当院で外科切除された膵癌症例ホルマリン検体を用い、QSTAR-Elite LC-MS/MS(AB Sciex)による網羅的プロテオーム解析を施行 した。その中で腫瘍組織において発現量が増加している蛋白のうち、バイオマーカー候補となりうる蛋白や、発がんに関与していると 思われる蛋白を幾つか選出し、免疫組織化学染色を施行して、発現の有無と局在を確かめた。結果、以下の5個の蛋白、dihydropyrimil dinase-like 5 (DPYSL5), dihydropyrimidinase-like 3 (DPYSL3), slingshot homolog 2 (Drosophila) (SSH2), armadillo repeat-c ontaining protein 4 (ARMC4), transforming growth factor, beta-induced (TGFBI),が腫瘍組織に選択的に陽性に染色され、組織内 においても発現が確認された。このうち予後と相関のあるARMC4について増殖マーカーや癌幹細胞マーカーとの二重染色を施行し、この蛋白の機能について解析を行った。少なくとも増殖マーカー陽性細胞と、ARMC4陽性細胞は異なったpolulationであり、癌幹細胞との関連も示唆される。またプロテオーム解析結果を見直し、バイオマーカー候補を追加選出し、免疫組織化学染色を施行し、発現を確認した。このうちparaneoplastic Ma antigen-like 1(PNMAL1)は予後と相関が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌症例検体を用い、QSTAR-Elite LC-MS/MS(AB Sciex)による網羅的プロテオーム解析を施行した。その中で腫瘍組織において以下の 蛋白の発現量が増加している蛋白のうち、バイオマーカー候補となりうる蛋白や、発がんに関与していると思われる蛋白を選出し、そ れらの蛋白について腫瘍組織において免疫組織化学染色を施行し、以下の5個の蛋白、dihydropyrimidinase-like 5 (DPYSL5), dihydr opyrimidinase-like 3 (DPYSL3), slingshot homolog 2 (Drosophila) (SSH2), armadillo repeat-containing protein 4 (ARMC4), t ransforming growth factor, beta-induced (TGFBI),paraneoplastic Ma antigen-like 1(PNMAL1)が腫瘍組織に選択的に陽性に染色され、組織学的にも発現が確認された。PNMAL1については免疫染色の強度と予後に相関が見られ、今後この蛋白の腫瘍増殖、細胞死、浸潤、転移能力との関連について解析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
プロテオーム解析と免疫組織化学染色にて腫瘍組織で発現が確認された蛋白に対し、症例数を増やしてReal-time quantitative (Q)-PCRを用いて発現とその程度を確認する。高発現している蛋白・ペプチドを比較検討することにより、膵臓発がんに 関連するバイオマーカーになる蛋白質を見出し、膵臓発がんの機序を明らかにする。さらに、腫瘍部の特異的な蛋白発現強度と臨床パ ラメータの関連を、SPSSを用いて統計解析する。Ingenuity Pathway解析を用いて蛋白質機能及び細胞内シグナリング、または代謝pat hway解析を行う。予後と相関の見られた蛋白について膵臓癌細胞株にてsiRNA法トランスフェクションを行い、遺伝子をノックダウンし、細胞の成長、増殖、細胞死、移動力について検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
アポトーシス(ssDNAまたはTunel蛍光染色キット)購入。 MTT アッセイキット、Invasion アッセイキット購入。
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