研究課題
膵癌は我が国において年々増加傾向にある。化学療法や分子標的薬などの進歩にも関わらず、現時点での最重要予後因子は外科切除可能かどうかであるが、早期発見が困難な腫瘍の一つであり、術前の生検組織診断もし難いのが実情である。そのため膵癌に特異的かつ非侵襲的に検査ができ、感度に優れたバイオマーカーの発見が望まれる。我々はホルマリン固定後手術組織検体を用い、QSTAR-Elite LC-MS/MS(AB Sciex)を用いた網羅的プロテオーム解析を行って膵癌のバイオマーカー候補の発見と、腫瘍発生のメカニズムの解明を目的とした。試料の処理にはホルマリン固定後検体を使用しうるLiquid tissue MS protein prep キットと、大阪市立大学医学部分子病理学教室で開発されたZwittergent試薬入り緩衝液を使用した。プロテオーム解析の結果、805個の蛋白が非腫瘍部に比して腫瘍部で異なる発現をしており、これらの蛋白は細胞運動や、浸潤、細胞骨格、細胞外マトリックスの構築、細胞死の抑制などに関わるものであった。これらの蛋白のうち、その機能が未知であり、かつバイオマーカーとなりやすい細胞質内、もしくは細胞外マトリックスに発現がある蛋白をバイオマーカー候補とし、下記の6個の蛋白、TGFBI、AGR2、EMILIN、 APOH、 DPYSL3、PNMAL1を選出し、これについて免疫組織化学染色による発現の部位、パターン、強度を検索し、50例の浸潤性膵管癌症例における予後との関係について生存分析を施行した。この中でParaneoplastic Ma antigen-like 1 (PNMAL1) において、この蛋白の発現は非発現例に比して長い生存期間に関連していた(log-rank test; p=0.009)。以上より、この蛋白は予後に関わるバイオマーカーになりうると考えられた。
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