中枢型肺扁平上皮癌手術切除症例24例と非肺癌解剖症例72例のQ-FISH法による気管支上皮テロメア長の測定を完了した。非肺癌症例では喫煙者の気管支上皮テロメア長が、非喫煙者に比べ有意に延長してることを見い出した。肺癌症例は喫煙歴不明の4例以外の20例全てが喫煙者で、気管支上皮のテロメア長は、非癌例の喫煙者と非喫煙者の中間の値を示していた。 喫煙者の気管支上皮のテロメア長に関しては今まで報告が無く、非喫煙者より有意に延長している結果は世界で初めての報告である。気管支上皮のテロメラーゼ活性に関しては既にいくつかの論文があり、喫煙者に活性の上昇がみられることが記載されており、今回の結果はテロメラーゼ活性の亢進によりテロメラーゼの延長も起きていることを証明したものと考えられる。 これまでの研究では、食道や口腔粘膜において癌の背景粘膜にテロメア長の短縮が起きており、これによる遺伝子の不安定性が発癌に関与していると考えられている。喫煙者肺癌では逆にテロメア長は延長しており、発癌のメカニズムが異なっているものと考えられる。喫煙者肺癌では、非喫煙者に比してp53の遺伝子変異が多くみられる一方、EGFRの遺伝子変異やALKの発現は減少しているなど、遺伝子的な相違が指摘されており、これは発癌メカニズムの違いに起因しているものと考えられる。 これまでの測定結果と考察を第102回日本病理学会総会(2013年6月、札幌)と第20回国際老年学会(2013年6月、ソウル)で発表した。さらに英語論文を作成して、現在投稿準備中である。
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