研究課題/領域番号 |
23590412
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
村田 晋一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20229991)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 甲状腺 / 細胞異型 / 核内封入体 / 中心体 / チューブリン |
研究概要 |
平成23年度は,培養細胞を使った基礎的研究を行った.所属が変更になったため,一部は平成24年度に渡って行う.1)甲状腺乳頭癌由来培養細胞(KTC-1)を用いて,従来よりも確実に核溝・核内封入体形成培養細胞を形成する系を確立した.培養細胞における核溝・核内封入体形成には,培養細胞をより密度高く培養することがポイントであった.この結果から,細胞間の接着が細胞骨格を通じて核形態に影響している可能性が示唆された.2)核溝・核内封入体形成培養細胞に対して,GFPをラベルしたα-tubulinを発現させ,生きた培養細胞が,核溝や核内封入体を形成する過程でのtubulinの動態を倒立型蛍光顕微鏡にて観察した.その結果,間期を通じて,細胞の動きに関わらず,γ-tubulinが存在するα-tubulinの密集部は常に核溝形成部位に近接していた.3)核溝・核内封入体形成培養細胞に対して,細胞骨格としてα/β-tubulin, keratin, actin を,核膜蛋白としてemerin, LAP2, BAF (barrier-to-autointegration factor)を多重蛍光免疫染色した.keratinやactinは核溝形成部位の核膜蛋白との結合性は伺えなかった.一方,α/β-tubulinは核溝形成部位の核膜蛋白の結合が示唆された.4)当初,甲状腺乳頭癌由来培養細胞(KTC-1)をコラーゲン・ゲル培地(Base Layer)に3次元培養し濾胞を形成する培養系を確立することを目指したが,現在のところ目的とする結果は得られていない.代わりに,現在,乳腺由来培養細胞MCF-10を用いて腺管形成させ,α/β-およびγ-tubulinの発現を解析している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年2月に埼玉医科大学より和歌山県立医科大学に移籍となったため,研究が遅れている.24年度においても,機材の新たな購入が必要となり,研究の遅れが危惧されるが,和歌山県立医科大学中央研究室や共同研究を行う講座の協力を得たいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
【平成24年度】 平成23年度に行ってきた培養細胞を使った基礎的研究を完了するともに,ヒト甲状腺癌手術材料や全身の正常および腫瘍組織を使った臨床病理的研究を行う.一部は平成25年度に渡った研究となることが予想される.具体的には,(1)まず,平成23年度に行った基礎的研究の続きとして,核溝・核内封入体形成培養細胞に対して,siRNA法を用いてtubulinやEmerin等の核膜蛋白の発現抑制し,核溝・核内封入体形成がどのように変化するかを観察する.(2)次に,甲状腺乳頭癌由来培養細胞ではうまくいかなかった濾胞形成とtubulinの解析の代用として,乳腺由来培養細胞をコラーゲン・ゲル培地(Base Layer)に3次元培養し,腺管構造を形成する系を解析に用いる.腺管構造形成において,γ-tubulinがどのような動態を示すかを解析する.(3)さらに,ヒトの甲状腺乳頭癌手術材料組織やその他の正常および腫瘍手術材料組織を用いて,実際のヒトの組織中でγ-tubulinがどのような発現をしているかを解析する.【平成25年度】 (1)ヒト甲状腺癌手術材料を使った臨床病理的研究を完了させる.(2)基礎的研究および臨床病理的研究を総括し,不足する研究を行う.(3)本研究を論文とし,英文誌に投稿する.というステップで研究を完結させたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように,平成24年度は,平成23年度に完結できなかった基礎的研究の続きと臨床病理学的研究を行う.具体的には,基礎的研究の続きとして,(1)核溝・核内封入体形成培養細胞に対して,siRNA法を用いてtubulinやEmerin等の核膜蛋白の発現抑制し,核溝・核内封入体形成が抑えられるか否かを観察する.(2)乳腺由来培養細胞MCF-10を用いて腺管形成させ,α/β-およびγ-tubulinの発現を解析する.臨床病理的研究として,(1)ヒトの甲状腺乳頭癌組織標本におけるγ-tubulinの発現解析を行う.(2)ヒトの全身臓器の正常組織や腫瘍組織に対して,γ-tubulinの発現解析を行い,甲状腺乳頭癌における発現状態との比較を行う. 本研究者は平成24年2月に所属を移籍した.このことから,上記の研究計画において最も必要である微弱な蛍光を捉えることのできる蛍光顕微鏡の入手が必要不可欠である.そこで,次年度の研究費は,まず,この蛍光顕微鏡の購入に充てる予定である.その他,siRNA実験や蛍光免疫染色のおける抗体を含めた試薬の購入に充てたい.
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