研究課題/領域番号 |
23590414
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
佐藤 雄一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30178793)
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キーワード | 肺癌 / 単クローン性抗体 / 自己抗体 / 血清 |
研究概要 |
1. 肺癌抗体の血清診断への応用に向けた検討は、腺癌を中心に300個の抗体の少数例の各種肺癌患者血清と健常人血清を用いた一次スクリーニングと、その中で有用と考えられた抗体に関しては各種組織型の肺癌細胞株を用いた免疫染色と免疫ブロット法を行った。有用と思われた抗体に関しては、多数例の肺癌を含めた各種癌患者の血清や健常人血清を用いたプロテインマイクロアレイ法を行うための方法の確立を行った。その中で、MUC5B対する抗体は腺癌の扁平上皮癌の鑑別に有用で、腺癌患者の予後とも関連している新たな肺腺癌マーカーであることを見出した。現在名分報告として、まとめている段階である。MYH9に対する抗体は、腺癌の予後と関連するマーカーであることが分かり、これも英文論文としてまとめているところである。その他、病理組織、患者血清診断に有用と思われる抗体が幾つかあるので、実験を追加して英文論文としてまとめる予定である。 2. 自己抗体に関しては、癌組織や癌細胞株とは反応するが、合成した正常タンパク質とは反応しないものが数多くあることが分かった。抗ANXA2自己抗体は合成タンパク質との反応性は肺癌患者と健常人血清では大きな相異はなかったが、癌細胞株から抽出したタンパク質とは癌患者血清とのみ強く反応した。このような腫瘍特異的翻訳後修飾を受けたタンパク質を用いた自己抗体解析が重要であることが分かり、これをまとめているところである。多数の抗原タンパク質がこのような状況にあり、健常人血清、良性肺疾患とは反応しない癌の早期診断マーカーとしての重要性を検証していく予定である。また、抗癌剤感受性予測マーカー獲得に自己抗体を用いているが、抗癌剤の効果があった患者となかった患者の治療前の血清を比較する方法で、効果のなかった患者でのみ認められたGalectin-3を見出した。これに関しても、現在まとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌特異的単クローン性抗体の患者血清との反応性に関しては、腺癌抗体を中心に現在まで約300個が終了している。肺癌患者血清中での反応性が認められた抗体に関しては、腺癌、扁平上皮癌、小細胞癌大細胞性神経内分泌癌と肺癌で代表的な組織型の細胞株を用いた、免疫染色、免疫ブロット法を行っている。一次スクリーニングで肺癌の血清診断に有用と考えられる抗体に関しては、新たにプロテインアレイを使用した多数例の患者血清(肺癌や胃癌大腸癌、乳癌等の代表的な癌との反応性を検討する予定である。肺腺癌の新たなマーカーとして、従来使用されているTTF-1に加えて、MUC5Bに対する抗体をこの研究で樹立し,現在英文論文としてまとめている。TTF-1とMUC5Bを合わせて使用することにより、腺癌の診断率が大きく向上する。また、TTF-1陰性でMUC5B陽性症例は著しく予後不良であることも見出した。夏までに投稿する予定である。 肺腺癌患者血清中の自己抗体の二次元電気泳動と免疫ブロット法を組み合わせた二次元免疫ブロット法 (2DE/IB) による解析を3例の肺腺癌 (AD) 患者血清を用いて、対象とするタンパク質をAD由来細胞株2種 (A549, LC-2/ad) を等量混合したもの、もしくは血清を採取した患者のAD組織を用いて、両者で同定される腫瘍抗原の相違を検索した。その結果、細胞株からは計53スポット41抗原、腫瘍組織からは計58スポット45抗原が同定され、両者で共通する抗原は9個のみであった。AD患者血清と反応した複数個のANXA2タンパク質を2DEゲルから切り出し、抽出・精製後、それぞれをメンブレンにスポットし、AD患者、健常人血清と反応させたところ、スポットごとに両者の反応性が異なることが確認された。特定の翻訳後修飾を受けたタンパク質スポットを用いることにより、腫瘍の鑑別に役立つ可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
1.今年度は、この研究の最終年度に当たるので、抗肺癌抗体の血清診断への有用性の一次スクリーニングを今までと同様に進めて行き、肺癌の早期診断に有用と考えられた抗体に関しては、肺癌を含む様々な癌患者の血清や健常人血清との反応性を、high through-putな系で行う事が出来るタンパク質マイクロアレイ法を用いて、詳細に検討する。有用な抗体に関しては,順次英文論文として報告する。 2.自己抗体に関しては、二次元免疫ブロット法で同定し、合成タンパク質では同定出来なかった、腫瘍特異的翻訳後修飾を受けていると思われるタンパク質に関して、ゲルから目的のタンパク質を抽出し、それを対象にしたドットブロット法での肺癌の早期診断法の有用性を確立する。すでに合成タンパク質では同定出来ない、腫瘍タンパク質を用いた方法の利点について、英文にまとめた。校正後、出来るだけ早く投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は最終年度であり、交付予定額である1,200,000円に加えて、平成24年度未使用額の439,206円を加えた合計1,639,206円である。この合計額を用いて、論文としてまとめる際に必要な実験および追加実験費用、ならびに作製抗体の二次スクリーニング用のプロテインアレイ用スライドグラス(1枚1万円)を購入する予定であり、全て物品費として使用する。その他、製菓発表旅費を含めた他の金額に変更はない。
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