1)子宮内膜癌細胞において、Sox4遺伝子はTCF4発現制御を介して、β-カテニンシグナル伝達系を活性化し、子宮内膜癌細胞の転位分化を誘導する。Sox7遺伝子は、Sox4発現誘導を介して、このシグナル伝達系を促進する。Sox遺伝子ファミリーは、Wnt/β-カテニンシグナル伝達系を制御することによって、子宮内膜癌細胞の増殖系を制御する可能性が示唆された。 2)子宮内膜癌細胞で、Sox9発現はNF-κB/p65系により発現誘導される。過剰発現したSox9は、p14ARF/p53/p21waf1系を介して、子宮内膜癌細胞の増殖抑制に関与する。Sox遺伝子ファミリーは、NF-κBシグナル伝達系を制御することによって、子宮内膜癌細胞の増殖系を制御する可能性が示唆された。 3)子宮癌肉腫では、Sox9/NF-κB系がtype IIコラーゲン遺伝子の発現誘導を介して、腫瘍細胞の軟骨分化を誘導する。Sox遺伝子ファミリーは、NF-κBシグナル伝達系を制御することによって、子宮癌肉腫細胞の分化誘導系を制御する可能性が示唆された。 以上のように、Sox遺伝子ファミリーは、β-カテニンやNF-κBシグナル伝達系と密に協調して子宮内膜癌や子宮癌肉腫の分化誘導や増殖制御に極めて重要な役割を果すことが明らかとなった。これらのシグナル伝達系をコントロールする分子標的薬の開発により、子宮内膜癌の新規治療法へ研究を展開することが期待できる。
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