研究概要 |
2000年から2013年までに川崎医科大学附属病院で診断されたdiffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) において、S1PR1の発現、STAT3の発現およびその活性化について、倫理委員会の承認のもと(承認番号1568)、パラフィン切片の免疫組織学(183例)および凍結標本のqRT-PCR法(11例)を用いて検討し、その臨床病理学的特徴を調べた。DLBCLにおいては、S1PR1の高度発現例は12%と比較的低頻度であったが、primary testicular lymphoma(PTL)に限れば9例中5例(55.5%)と高頻度に陽性であった。細胞起源で比較すると、S1PR1陽性例においては、non-GCB typeが、22例中17例(77.2%)と高率であった。ABC-DLBCLにおけるS1PR1の発現とその転写因子であるSTAT3の恒常的な活性化との間には密接な関係があるとの報告があるが、本研究においてその関連性は見いだせなかった。また、PTLにおいては特にS1PR1高発現とSTAT3の活性化の関連性が認められなかった。したがって、DLBCLにおけるS1PR1の高発現にはJAK/STAT3経路以外のシグナル伝達系の関与が示唆される。S1PR1の高発現はDLBCLにおいてOSを有意に増悪させることがわかった。さらに、S1PR1の機能的アンタゴニストであるFTY720の投与が、S1PR1陽性悪性リンパ腫の増殖をin vivoで抑制するか否かについて,実験動物委員会の承認(承認番号14-001)のもと検討した。Western blotと免疫組織化学でS1PR1陽性かつSTAT3の恒常的活性化がみられた成人T細胞白血病ウイルス感染細胞株HUT102について、SCID(C.B17/lcr-scidJcl)異種移植片モデルを作製できた。現在、HUT102の移植後6日目よりFTY720を10mg/kgを連日腹腔内投与して、その抗腫瘍効果を見ているところである。
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