研究課題
肝移植開始後移植後10年経過後も、グラフト不全に至る例がある一方で、免疫抑制剤が中止でき、グラフトの組織学異常を示さない免疫寛容に至る例があるが、免疫寛容に至る理由は不明である。患者由来の免疫担当細胞による拒絶が回避されるのは、グラフトにレシピエント細胞が共存するキメリズムの成立も一因と考えられるが、肝細胞を厳密に選択し、グラフトの肝細胞キメリズムの成立を調べた報告はほとんどない。また、長期経過後、グラフト不全が徐々に進行する例はグラフトの老化との関連も示唆される。肝移植後のキメリズムの成立およびグラフト老化の検討のため、京大病院病理データベースから肝移植後10年以上経過した患者のうち、ドナーの肝臓や移植後長期の生検が入手可能な例を抽出した。昨年よりさらに症例を増やし、移植後長期安定し、免疫抑制剤減量中の患者13例(安定群)と移植後肝機能異常、グラフトに組織学的変化をきたしている患者11例(グラフト不全群)を抽出した。ホルマリン固定パラフィン切片を用いて、肝細胞核をマイクロダイセクションで捕捉した。抽出したDNAを用いて、マイクロサテライトタイピングを行ったところ、両群ともに約半数の症例にキメリズムを認め、両群で差はなかった。異性間移植例におけるXY染色のFISHを用いた検討でも、両群でキメリズムの有無、程度に差はなかった。さらに、老化マーカーであるp21による免疫組織化学法にて、ドナー肝に比較して、免疫寛容群では肝細胞核の陽性像が有意に多く認められ、免疫寛容においてもグラフトの老化の進行が示唆された。
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