研究課題/領域番号 |
23590427
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
松崎 純一 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80448597)
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研究分担者 |
田村 保明 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80322329)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 熱ショック蛋白質 / Hsp90 / 樹状細胞 / Toll様受容体 / 自然免疫 / 癌ワクチン |
研究概要 |
平成23年度においては、ヒトの通常型樹状細胞 (cDC)と形質細胞様樹状細胞 (pDC)を用いて、代表的なTLRリガンドであるLPS, CpG-AおよびCpG-Bをそれぞれ単独で、あるいはヒトHsp90との複合体を形成させてこれらの樹状細胞を刺激した際の、自然免疫活性化能を比較検討した。その結果、LPS単独刺激と比較して、Hsp90-LPS 複合体では高い炎症性サイトカインの産生を認めた。さらに微量のLPS刺激ではIFN-β産生は認めないが、Hsp90-LPS複合体で刺激すると、IFN-β産生を認めた。これはHsp90-LPS複合体が効率良くエンドサイトーシスにより樹状細胞に取り込まれ、エンドソーム経路でTRAM-TRIF経路でIFN-βの産生を誘導することを共焦点顕微鏡を用いて示した。またCpG-AおよびCpG-BをpDCにパルスすると、Hsp90との複合体でパルスした場合、CpG-A, CpG-B単独と比較するといずれも高いIFN-α産生を認めた。非常に興味深いことに単独ではIFN-a産生能を示さないCpG-BもHsp90と複合体を作製して、pDCを刺激するとIFN-αの産生を認めた。これはHsp90-CpG-B複合体はCpG-B単独と比較して、長時間TLR9が局在する初期エンドソームに貯留し、TLR9刺激が持続することを明らかにした。このようにHsp90はシャペロンする自然免疫リガンドの局在を時間的・空間的に変化させて、自然免疫応答を制御できることを示した。 平成24年度においては、本研究成果を基盤にHsp90-自然免疫リガンド複合体と癌ワクチンペプチドを用いた抗腫瘍免疫応答の増強効果について、最適な組み合わせを決定すべく検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に計画した内容はおおむね検討できた。Hsp90を用いた自然免疫活性化制御の基盤的知見を基に、癌ワクチン効果増強につき検討を進める。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、Hsp90による自然免疫活性化制御を応用した癌ワクチンの効果増強について以下の検討を進める。(1)ペプチドワクチン増強効果の検討 癌抗原ペプチドSurvivin2BをHLA-A24トランスジェニックマウスに免疫する系を用いて、Hsp90-TLRリガンド複合体のコンビネーションによる細胞傷害性T細胞誘導効果を含む獲得免疫増強効果を検討する。(2)ペプチドワクチン増強効果の検討 癌抗原ペプチドSurvivin2BをHLA-A24トランスジェニックマウスに免疫する系を用いて、我々が樹立したHLA-A24トランスジェックマウス由来の腫瘍にSurvivin2Bを発現させた同型腫瘍を用いて、Hsp90-TLRリガンド複合体のコンビネーションによる治療効果をSurvivin2Bペプチド単独と比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬・抗体(80万円)、ラジオアイソトープ(10万円)、実験動物(40万円)、実験器具(20万円)合計150万円
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