研究課題/領域番号 |
23590427
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
松崎 純一 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (80448597)
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研究分担者 |
田村 保明 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80322329)
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キーワード | 樹状細胞 / 抗原ペプチド / クロスプレゼンテーション / CpG / LPS / 細胞障害性T細胞 |
研究概要 |
平成24年度においては、予想外であったが、非常に興味深い結果を得ることができた。すなわち、ヒトの形質様樹状細胞(pDC)にCpG-Aをパルスすると、IFN-aの産生はもちろん、Hsp72が分泌されることを初めて明らかにした。マウスのpDCを用いて検討しても同様の結果を得た。さらにこのHsp72の分泌はTLR9ノックアウトマウス由来のpDCでは観察されなかったことから、CpG-AによるTLR9刺激依存性であることが確認された。そこでHLA-A24トランスジェニックマウス由来のpDCにSurvivin2B由来前駆抗原ペプチドをパルスすると、CpG-AをパルスしていないpDCと比較して、明らかにペプチドのクロスプレゼンテーションが増強し、Survivin2B特異的細胞障害性T細胞 (CTL) を活性化した。この時、pDC上のMHC class I分子の発現には差は認めなかった。パルスする抗原ペプチドを蛍光標識して検討を行った結果、CpG-AパルスされたpDCへの抗原ペプチドの取り込みが増強していた。分泌されたHsp72の役割を検討する目的で、CpG-Aで刺激する際、同時に抗Hsp72抗体を加えておくと、このクロスプレゼンテーション増強は消失した。さらにHsp72と抗原ペプチドを同時に免疫すると、ペプチド単独免疫と比較して、高い細胞障害活性を示すCTLを誘導できた。一方、LPSでconventionalDCを刺激した場合では、Hsp72の分泌は認めなかった。クロスプレゼンテーションはやや増強したが、CpG-Aと比較すると弱いものであった。このようにアジュバントとしてのCpG-Aによる免疫増強効果は、分泌されたHsp72のシャペロン作用によることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度における研究計画にある (1) Hsp90-TLRリガンド複合体による樹状細胞活性化と癌抗原ペプチドのクロスプレゼンテーション促進に与える影響については、TLR9のリガンドであるCpG-AがHsp72の分泌・放出を介して、抗原ペプチドのpDCへの取り込みを増強することを明らかにした。その結果、クロスプレゼンテーション効率が増強し、高い活性を有するCTLの誘導を得ることを示した。 (2) ペプチドワクチン増強効果の検討については、CpG-Aとともに抗原ペプチドを免疫すると、前述したように高い活性を有するCTLの誘導を得ることを示した。 以上のように、当初の研究計画に従っておおむね良好に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究において、CpG-AによるpDCの活性化と同時にHsp72の分泌・放出が生じ、これが外来性抗原のクロスプレゼンテーションを増強することが示されたことより、平成25年度においては、Hsp90-抗原複合体のクロスプレゼンテーションに及ぼす効果を検討する。さらに、Hsp72の存在下におけるHsp90-抗原複合体のpDC内局在を検討する。また実際にCpG-Aの有無でマウスにHsp90-抗原複合体を免疫した場合のCTL誘導効果を比較検討する。また当初の計画にあるHsp90/Hsp70によるNALP3リガンドのマクロファージ、樹状細胞内局在制御と動態をtime-lapse法を併用した共焦点レーザー顕微鏡を用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養液、器具購入費、動物購入費、試薬類に使用する。
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