研究課題
形態異状(異型性)はがん細胞に共通にみいだされる特徴である。本研究の目的は、その分子基盤の一端を明らかにすることである。申請者はこれまでに、がん遺伝子KRASによってヒト気道上皮細胞に誘導される形態変化を異型性のモデル実験系とし、遺伝子発現アレイを用いたKRAS下流分子の網羅的検索から、異型性に関わる複数の責任分子を同定してきた。また、本年度(2013年度)までの研究計画において、プロテオーム解析を用いたKRAS下流分子の網羅的検索から、遺伝子発現アレイでは得られなかった候補責任分子として細胞内塩素イオンチャンネルCLIC4を同定した。申請課題では、特に、肺がん細胞におけるCLIC4の発現異状に着目し、異型性の分子基盤として可能性を検証した。CLICL4の蛋白質発現が複数の肺がん細胞株や原発性肺がん細胞において顕著に低下していること(Okudela K et al PLOSone 2014)、また、CLIC4のノックダウンによって、KRASがん遺伝子の導入によって引き起こされたものと類似の形態変化(細胞の大型化、核の大型化、クロマチンの粗造化)がヒト気道上皮細胞に誘導されることを明らかにした。CLIC4は、種々の上皮細胞に広く発現する細胞内塩素イオンチャンネル構成分子であり、最近、皮膚表皮細胞や角膜上皮細胞の再生(増殖・分化)と組織構築の維持に重要な役割を担っていることが報告されている(Padmakumar VC et al. Am J Pathol. 181(1):74-84, 2012)。このことは、がん細胞におけるCLIC4の発現異状が異型性を引き起こす一分子基盤である可能性を支持している。また、申請らが先行して同定したFXYD3も細胞内塩素イオンチャンネルの制御因子であり、細胞内塩素イオン濃度の制御障害と異型性とのなんらかの関連が示唆され興味深く感じられた。
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