研究概要 |
atypical Protein Kinase Cλ/ι(以下, aPKCλ/ι)はPAR3, PAR6等の蛋白と結合し細胞極性の形成,維持に重要な役割を果たしている(以下,aPKC/PAR系).癌細胞は正常細胞と異なり細胞極性の異常を示す.我々は癌細胞ではaPKC/PAR系の異常が生じていると考え,癌細胞におけるaPKC/PAR系の異常を検討してきた。その結果,各種癌でaPKCλ/ιの高発現が認められた.また癌の分化程度が低くなるに従い, aPKCλ/ιが高発現することを示した。前立腺癌細胞ではaPKCλ/ιを強制発現するとインターロイキン6 (以下、IL6)が誘導されること, IL6によりアンドロゲン受容体の発現増強が起こりホルモン不応性が生じることを報告した。さらに前立腺癌臨床検体を用いてaPKC, IL6がともに高発現している症例で前立腺全摘術後のPSA再上昇を指標としたbiochemical recurrenceまでの期間が有意に短いことを示した(Ishiguro, Akimoto, Nagashima et al. 2011)。 今年度はaPKCの結合蛋白の一つであるKIBRAの高発現が胃癌においてリンパ管侵襲と有意に相関することを示した(Yoshihama, Akimoto, Nagashima et al. Cancer Sci 104(2):259-265, 2013)。このことはaPKC/PAR系が胃癌の進行に関与しており、特にKIBRAを制御することによってリンパ行性転移を制御しうることを示すものである。 さらに前立腺癌ではend point(術後再発、転帰など)が明らかな症例について術前針生検標本において、aPKCおよびIL6が高発現している群における予後を検討した結果をまとめている(Yokomizo, Nagashima et al., 投稿準備中)。
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