研究概要 |
【背景】aPKCλ/ιは細胞極性を規定する反面、癌での高発現が知られている。またその下流にはIL6が存在し、がんの発生、進行に重要な役割を有していることが、我々や他のグループによって明らかにされている。 【材料と方法】本研究では各種癌の臨床検体を用い、aPKCλ/ιおよびその下流にあるIL6の発現が癌の発生と予後に与える影響を検討した。今回は特に、膵癌(難治癌であり治療のモダリティーが求められる)、子宮頸癌および前癌病変であるCIN(発生経過を追求しやすく、社会的にも重要な問題である)、前立腺癌針生検検体(先行研究では全摘標本に対し後ろ向きな研究を行ったが、今回は生検標本から前向きに患者の予後を推測しうるかの検証を行った)について免疫組織化学的に、aPKCλ/ιの発現と局在を調べた。材料は横浜市立大学附属病院病理部に提出されたホルマリン固定パラフィンブロックからの組織切片を用いた。研究については学内倫理委員会の承認を得、患者あるいは保護者からのインフォームドコンセントを取得した。 【結果と展望】1.膵癌ではaPKCλ/ιの高発現は独立した予後不良因子であることがわかった(Kato, Nagashima et al.Pancreatology, 2013)。2.子宮頸癌の前癌病変であるCINでは、CIN1, CIN2, CIN3と異型性を増すごとにaPKCλ/ιの発現が増強することがわかった。またフォローアップによって異型度が上昇した症例ではaPKCλ/ιが核に局在する傾向が強いことが示唆された(Mizushima, Nagashima et al., 論文投稿準備中)。3.前立腺生検標本ではGleason gradeが高い癌がaPKCλ/ι, IL6の発現が高く、悪性化に関わっている事実が確認された、今後は予後予測のための前向き研究を行う。
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