研究課題/領域番号 |
23590431
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
増田 友之 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10199698)
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研究分担者 |
柴崎 晶彦 岩手医科大学, 医学部, 助教 (20445109)
前沢 千早 岩手医科大学, 医学部, 教授 (10326647)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | EMT / 肝癌 / HGF / MET / TGFβ |
研究概要 |
上皮―間葉系移行(epithelial-mesenchymal transition; EMT)現象は,がん細胞の浸潤・転移能の獲得に大きな役割を果たす.本研究課題では,HGF (hepatocyte growth factor)/MET刺激誘導型のEMT現象に対して,微小管の修飾状態が及ぼす現象に着目し,微小管過アセチル化がHGF/METシグナル伝達系の抑制を介して,細胞運動/浸潤/増殖能を低下させる分子機構を明らかにする.具体的には,HGF/MET刺激誘導型のEMT現象に対して微小管過アセチル化がどのような影響を与えるか,(1)METのリン酸化状態,(2)下流シグナル分子(ERK1/2,RAC1)への影響,(3)細胞機能形象(細胞運動/浸潤/増殖能)に関して検証し,その分子機構を明らかにする.これまでの研究成果により,微小管の脱アセチル化作用を持つHDAC6のsiRNA処理は肝細胞がん培養細胞株において,METの細胞膜への凝集,リン酸化の亢進を誘導した.されに,下流のERK1/2のリン酸化も誘導したが核内移行は阻害されたため,細胞増殖能には影響を与えなかった.HDAC6の発現抑制ではEMTの誘導はできなかったが,肝細胞癌培養細胞株の運動能,浸潤能は抑制した.つまり,HDAC6は肝細胞癌培養細胞株ではMETの自己リン酸化を誘導し一見EMTが誘導され細胞運動能が亢進するが,それはMET signalを介した系には依存していない可能性が示唆された.また,ヒト原発巣でHDAC6の発現を免疫染色で検討すると,過剰発現群で有意に肝内転移が認められ,HDAC6の過剰発発現は肝癌の新らたな悪性度の指標になる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に研究の90%が終了し,一部論文も受理されている.研究生は次年度に,日本癌学会,病理学会で発表予定である.また,今後は細胞生物学的研究成果について論文を作成するとともに国民に広く発信して行く予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,次のステップとしてEMT誘導の機構をHGF/METの系だけでなく,TGFβについても行い,これまでの研究成果との比較検討を行い,肝癌の肝内転移の機構に迫る予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究経費は,TGFβ,HGFを含む試薬が主体で,他に成果公表様の別冊代,英文校正料を計上した.正解のweb公開は講座のHP等を使用し,学術誌・学会ばかりでなく広く国民に発信して行く.
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