研究課題
Hodgkinリンパ腫(HL)では、CD30過剰発現の誘導にCD30-ERK1/2-JunB-CD30ループが関与し、ERK1/2やNF-κBの活性化を介して増殖の分子基盤を形成していることが明らかになっている。HLの約50%の症例ではEpstein-Barrウイルス(EBV)の感染が報告されており、腫瘍発生に至る重要な原因と考えられている。本研究ではEBVを末梢血B細胞に感染させ、B細胞がトランスフォーメーションする過程でHL細胞の増殖の分子基盤であるCD30-ERK1/2-JunB-CD30に加え CD30-NF-κB-CD40ループの誘導を検討し、HL発症機構における意義について考察した。末梢血リンパ球にEBV を感染させ、Lymphoblastoid cell line (LCL)へのトランスフォーメーションに関わるとされるEBV膜蛋白質LMP-1に加えCD30、JunB、CD40の誘導とERK1/2、NF-κBの活性化を検討した。EBVを末梢血B細胞に感染させると感染前はCD40のみの発現であったが20日の時点でLMP-1、CD30、JunBの誘導、ERK1/2、NF-κBの活性化を認めた。50日の時点で感染細胞はLCLとなり、LMP-1の発現に比してCD30、JunBは強く誘導、CD40は変化無く、下流のERK1/2、NF-κBの活性化を恒常的に認めた。これらのことはB細胞がEBVによりトランスフォーメーションする過程でHL細胞の増殖の分子基盤であるCD30-ERK1/2-JunB-CD30が誘導されること、LCLではむしろLMP-1非依存的に上記経路が誘導されていることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
初年度に計画していた実験はほぼ完了し、仮説の検証に必要な基本的なデータを取得できたから。
EBV感染B細胞のlymphoblastoid cell line (LCL)へのトランスフオーメーションの過程で誘導されたLMP-1とCD30、CD40、NF-κB、AP-1(JunB)の分子クロストークを、「各分子の活性化とそれによる脱制御の連鎖」として解析する事によりHodgkinリンパ腫(HL)の発症に至る分子機構の解明を目指す。平成24年度はCD30によるJunB誘導機構に加え、LMP-1によるJunB誘導機構を検討し、LMP-1によるCD30-ERK1/2-JunB-CD30ループの恒常的活性化機構を中心として解析していく。
研究がほぼ予定通りに進捗しているため、研究費についても当初と同じ計画にて使用予定である。
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