研究課題
本研究では、ペプチド内に存在するアルギニンをシトルリンに変換する機能を持つPeptidylarginine deiminase (PAD)が癌を含めた様々な病態成立にどのように関わるのかを解明し、診断・治療に資する高感度の測定法を開発し臨床例に応用することを目的とする。また、本研究ではPADサブタイプの2型と4型を中心に可能な限り網羅的に臨床例を解析する。本年度、血中human PAD4(hPAD4)濃度の測定系、及びhPAD4自己抗体の検出系を確立し、関節リウマチ(RA)患者の血中hPAD4濃度、及びhPAD4自己抗体の有無を調べた。即ち、hPAD4組換えタンパク質(rhPAD4)を大腸菌で発現、精製した。hPAD4に特異的なモノクローナル抗体を作製し、hPAD4に特異的なサンドイッチELISA法、及びhPAD4の自己抗体を検出するサンドイッチELISA法の2種類を確立した。そして、RA患者32例、健常者20例の血中hPAD4濃度及びhPAD4自己抗体の有無を測定した。その結果、RA患者ではhPAD4高値を示すものがあったのと同時にゼロ値を示すものが存在した。さらに、ゼロ値を示したほとんどの患者でhPAD4自己抗体が陽性であった。一方、健常者ではRA患者に比べてhPAD4が低値であった。また、ゼロ値を示す健常者はいなかった。これらの結果から、RAの初期ではhPAD4が高値となり、やがてhPAD4の自己抗体ができる可能性が示唆された。今回確立したhPAD4測定法及びhPAD4自己抗体検出法はRAの早期診断へと応用できる可能性が考えられる。今後の利用が期待される成果である。
2: おおむね順調に進展している
今年度の研究の目的の主眼はPAD4にかかわる測定系の開発であり、基本的に達成した。また確立した測定系が患者血清を用いての評価に耐えるものであったことから、当該年度の目的を達成したと考えている。
今後、悪性腫瘍を中心に可能な限り網羅的に解析し、PADの病態生理学的意義を解析する。
研究を推進するために必要な機器・解析技術は整備されており、網羅的な疾患解析に必要な試薬・消耗品に充当する。
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