研究課題/領域番号 |
23590443
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
飯笹 久 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 助教 (80306662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | EBウィルス / 幹細胞 |
研究概要 |
平成23年度は、まずEBウィルス上咽頭がん細胞株C666-1よりEBウィルス陰性細胞株の樹立を試みた。限界希釈法により細胞株の樹立を行ったが、限界希釈法では細胞自体の増殖が認められなかった。現在、EBウィルスのゲノムが染色体へ組み込まれた可能性を考え解析を行っている。更に抗ウィルス薬の処理とIGF-1添加を併用して、再度株化を試みている。次に、幹細胞を高感度で検出するベクターを作成するために、幹細胞特異的転写因子SOX2のプロモーター及びエンハンサー、OCT4のエンハンサー、KLF4の結合領域及び蛍光遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子を作成した。これらベクターのうち、CMVminiプロモーターに、ヒトLEFTY1遺伝子のプロモーター領域より分離したKLF4結合領域を複数回含んでいるベクターでは(下流にルシフェラーゼ遺伝子を含む)、KLF4依存的にルシフェラーゼの活性を増加させた。また、SOX2プロモーターにエンハンサー領域を含むベクターでは、ヒトES細胞と遺伝子発現プロファイルが類似しているヒトテラトーマ細胞株PA-1において、SOX2及びOCT4依存的にルシフェラーゼ活性を亢進した。また、OCT4のエンハンサー領域現在、これらベクターのルシエラーゼ遺伝子を蛍光遺伝子に置換し、セルソーターによる分離及びその遺伝子発現パターンを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EBウィルス陰性株の樹立については困難であるが、幹細胞を分離するベクターの開発は順調に行われている。また、上皮細胞におけるEBウィルスの感染実験についても、共同研究者と共に行っている。更に、EBウィルスが感染可能な複数の上皮細胞株を入手済みであることから、研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
C666-1に関しては、サザンブロッテイング法及びFISH法によってEBウィルスが宿主の染色体に組み込まれているか否かを確認する。また、平行してEBウィルスが感染可能な上皮細胞株を用いて、感染後の影響を解析する。更に、幹細胞を検出するベクターの開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)幹細胞誘導活性を有するEBウィルス遺伝子の同定:EBウィルス陽性C666-1に、EBウィルス遺伝子に対するsiRNAを導入し、FACS解析にて幹細胞集団が減少を確認する。次に、siRNAで変動が認められた遺伝子の発現ベクターを、細胞株に導入し、幹細胞集団が増加するかを確認する。EBウィルス由来miRNAに幹細胞誘導活性が認められた場合、miRNAの標的遺伝子の検索を、Ago2に対する抗体を用いて免疫沈降法にて行う。(2)Cell-to-Cell contact methodを用いたEBウィルスの細胞株への感染:樹立したEBウィルス陰性株に、Neomycin耐性遺伝子を組み込んだEBウィルスを有するAkata細胞株を共培養し、G418による薬剤選択法を用いてEBウィルス感染C666-1を再度樹立する。EBウィルスの感染は、II型潜伏型感染のマーカー(EBNA1, LMP1, LMP2A, EBER)をRT-PCR法にて確認し、幹細胞集団はFACS解析にて解析する。(3)上咽頭がんにおけるEBウィルス由来幹細胞誘導因子の解析:樹立した細胞株に、同定した遺伝子を欠落するEBウィルスを感染させる。この細胞株と(2)の細胞株を比較して、上咽頭がんのEBウィルス感染における幹細胞誘導因子の役割について、詳細な解析を行う。また同時に、接着依存性増殖、細胞運動性、低酸素条件下での細胞増殖についても解析を行い、このときがん幹細胞集団の細胞数に変化が認められるかを解析する。
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