研究課題
平成23年度に試みたEpstein-Barrウイルス(EBV)陽性上咽頭がん細胞株C666-1からの、EBV陰性細胞株樹立がうまくいかなかった原因を探るために、平成24年度は、C666-1のFISH解析によるEBVの染色体組込みの有無を解析した。陽性コントロールであるバーキットリンパ腫細胞株Raji細胞と比較して、C666-1細胞1つあたりに大量のEBVが存在することが明らかとなったが、EBVゲノムのヒト染色体へ挿入は認められなかった。また1細胞あたり同様なウイルス数であるバーキットリンパ腫細胞株Daudiでは、EBV陰性細胞株が得られていることから、薬剤処理などの工夫と限界希釈法を組み合わせることで、株化を再度試みることとした。次に、幹細胞を高感度で検出するレポーターを作成するために、蛍光遺伝子もしくはルシフェラーゼ遺伝子の上流に幹細胞特異的転写因子SOX2のプロモーターを挿入したレポーターを作成した。SOX2が発現している乳がん細胞株を用いてレポーターを解析した結果、1)SOX2プロモーターの活性は、SOX2遺伝子の発現と相関性があること。2)レポーターを用いて分離した細胞は、高いSphere formation活性を有することが明らかとなった。更に、SOX2プロモーターの結合タンパク質を解析した結果、未報告の因子がSOX2プロモーターの活性を抑制することが明らかとなった。現在、同定したタンパク質のがん幹細胞集団における役割について、詳細な解析を行なっている。
2: おおむね順調に進展している
EBV陰性株の樹立については困難であるが、ゲノム中への挿入が認められないことから、更なる工夫によって樹立可能と考えている。また幹細胞分離するレポーターの開発は、SOX2プロモーターを用いることで、高いSphere formation活性を有する細胞集団の分離が可能となった。上皮細胞へのEBV感染実験については、共同研究者が既に複数の細胞株を樹立しており、感染細胞の解析を行なっている。EBVが感染可能な複数の上皮細胞株は既に樹立済みであり、研究は順調に進展していると考えている。
C666-1に関しては、EBV除去剤として報告されているヒドロキシカルパミド処理もしくはEBNA1 dominant negative の遺伝子導入を行うなどの工夫をして、再度樹立のチャレンジを行なう。EBV感染可能な上皮細胞については、MCF10Aなどの非腫瘍細胞や不死化上咽頭細胞株を用いてその影響を解析する。幹細胞分離可能なベクターについては、分離した細胞の解析を行い更なる改良を進める。
該当なし。
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