研究概要 |
1) Synaptogenesisに対する検討 血小板由来増殖因子受容体 beta (PDGFR-b) conditional knockout (KO) mouseより分離した海馬初代培養神経細胞は、コントロール神経細胞と比較して、培養初期ではdendritic filopodiaの運動性が有意に低下し、培養21日目ではPSD95、シナプシン免疫組織化学によりspineの数が有意に低下した。その原因として、PCR array、RT-PCRを用いてRho familyを含めた84種類の細胞骨格関連因子の増減をPDGFR-b conditional knockout 神経細胞とコントロールの神経細胞において比較検討し、RhoA, VASP, PAL1, ARPC3が有意差をもって減少した。これらの因子は神経細胞growth cornのfilopodia、lameripodiaを形成するために重要な因子で、PDGFR-b KOはdendritic filopodiaの運動能が低下するためにシナプス接着の機会が減少し、spineの数が減少することが示唆された。PDGFR-b KO mouseの海馬神経細胞の形態学的観察でもspineの数が減少していることが確認されており、本研究はその機序を示唆するものと考えられた。 2)神経細胞死に対する検討 初代培養神経細胞に過酸化水素を用いて酸化ストレスを与え、PDGF-Bの前投与により、神経細胞内カルシウムイオン濃度とカルパイン1, 2の活性化は有意に減少した。神経細胞内カルシウムイオン濃度の上昇はカルパインの活性化を誘導し、カルパインは脳虚血や外傷などの急性神経細胞死とアルツハイマー病等の慢性神経細胞死を媒介する重要な因子である。PDGF-Bの神経保護作用にカルシウムの経路およびカルパインの経路が関与することが示唆された。論文はacceptされ、web上では公開された。
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