研究課題
細胞内遊離コレステロール転送蛋白(NPC1)欠損のために後期エンドゾームに大量の遊離コレステロールが蓄積して細胞傷害・細胞死を来すC型Niemann-Pick病(NPC-/-)に対してACAT1陽性後期エンドゾーム(ACAT1-LE)の誘導による治療効果を検討した。NPC-/-マウス骨髄単球由来マクロファージ(Mφ)をメチルβサイクロデキストリン(mβCD)コレステロール複合体(mβCD-cho)で処理して泡沫化させると、本来小胞体に存在するACAT1と後期エンドゾームマーカーであるLAMP2のシグナルが20%程度一致するようになった。同じ実験条件下でNPC-/-マウスMφ内のコレステロール含量を定量解析すると、未処置NPC-/-マウスMφ内に貯留していた大量の遊離コレステロールはmβCD-cho処理によって減少し、その代わりにエステル型コレステロールが著明に増加していた。また、mβCD-cho処理後のNPC-/-マウスMφではトリチウムラベル遊離コレステロールのエステル化能が回復していた。これらの実験結果はNPC-/-マウスMφにおいてもヒトMφと同様に泡沫化に伴う小胞体の断片化によって形成されたACAT1陽性小胞が後期エンドゾームと機能的に融合してACAT1-LEを形成した結果、NPC1が欠損しているにもかかわらず後期エンドゾームにおける効率的な遊離コレステロールのエステル化が生じていることを意味している。そこでNPC-/-マウス新生仔にmβCD-choを投与してACAT1陽性後期エンドゾームの誘導がNPC-/-マウスの生命予後を改善できるかどうかを検討したところ、コントロールNPC-/-マウスに比べて50%程度の生命予後改善効果が認められた。これらの実験結果よりACAT1-LEの誘導はNPC-/-の有効な治療戦略となり得ることが示された。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の段階で予想していたデータはほぼ取得することができたが、NPC-/-病態の標的臓器である中枢神経ならびに肝の組織学的解析が終わっていない。
今後の課題であるNPC-/-マウスにおける中枢神経ならびに肝の組織学的解析とともに、実験計画の段階では予想していなかったNPC-/-病態における上皮細胞間タイトジャンクション傷害の可能性についても検討を進めていく予定である。
ACAT1陽性後期エンドゾーム(ACAT1-LE)誘導によるC型Niemann-Pick病(NPC)の治療効果を検討する中でNPC病態において細胞接着装置の破綻が生じていることが明らかとなった。この現象は過去に報告がなく、病態解明の重要な手がかりと考えられるためより詳細な解析を実施する必要が生じ、この解析に係る経費について未使用額が生じた。これまでの研究によって明らかとなったNPC病態における細胞接着装置破綻のメカニズムを次年度に解析するため、未使用の研究費は細胞接着装置破綻メカニズム解析の実施に必要な細胞培養試薬や遺伝子解析試薬購入の経費に充てることにしたい。
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