研究概要 |
HOXD8が大腸癌の肝転移抑制遺伝子として働いているのではないかと考え、その証明を試みた。 ヒト大腸癌KM12SM細胞をヌードマウスの様々な臓器 (盲腸, 肝臓, 脾臓および腹膜) に移植し, 形成された腫瘍組織からRNAを抽出し,HOXD8の発現をリアルタイムRT-PCR法で解析した。その結果, 盲腸で増殖している腫瘍組織のHOXD8の発現レベルは他の臓器で増殖している腫瘍組織に比べ高いことがわかった。また, 盲腸で増殖している癌組織のヘパラナーゼ(HPSE)およびMMP-2の発現レベルは, 他の臓器で増殖している癌組織に比べ, 高い傾向が認められ, とくに HPSEの発現パターンはHOXD8と類似していた。 つぎに, 内皮下基底膜モデルであるマトリゲルに対するヒト大腸癌SW480細胞の浸潤能とHOXD8の発現の関連性について調べた。浸潤アッセイは3度繰り返して低浸潤性亜株細胞(3×非浸潤細胞)および高浸潤性亜株細胞(3×浸潤細胞)を選別した。それらの細胞のHOXD8の発現を解析したところ, 3×浸潤細胞のHOXD8の発現レベルは親株および3×非浸潤細胞に比べ, 有意に高いことが明らかとなった。さらに, HPSEの発現量は3×非浸潤細胞と比べ, 3×浸潤細胞で有意に高いことがわかった。 大腸癌細胞の肝類洞内皮細胞への接着能とHOXD8の発現との関連性について検討した。KM12SMおよびSW480細胞から肝類洞内皮細胞への接着接着性を指標に高接着性亜株と低接着性亜株を選別し、それぞれのHOXD8の発現を調べた。その結果、 両細胞株ともに接着細胞と非接着細胞間にHOXD8の発現には差がないことがわかった。 以上、大腸癌の肝転移において, HOXD8は転移成立過程の癌細胞が置かれた場所によって転移促進的あるいは抑制的に働く可能性が示唆された。
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