本研究では、HOXD8が大腸癌の肝転移抑制遺伝子として働くことを証明するために、肝転移成立過程の3つの段階におけるHOXD8の役割について実験病理学的に解析した。その結果、内皮下基底膜に対する浸潤性はHOXD8の低発現細胞に比べ、高発現細胞で高いこと、肝類洞内皮細胞への接着性とHOXD8の発現レベルには関連性がないこと、ならびにヌードマウスの肝臓で増殖している癌組織のHOXD8の発現は盲腸でのそれに比べ低いことが明らかとなった。以上より、大腸癌の肝転移において、HOXD8は転移成立過程の癌細胞が置かれた場所によって転移促進的あるいは抑制的に働く可能性が示唆された。
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