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2012 年度 実施状況報告書

「くり込み薬」による血管新生阻害

研究課題

研究課題/領域番号 23590459
研究機関大阪大学

研究代表者

楢崎 雅司  大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00467573)

キーワード血管新生 / 血管内皮細胞 / Neuropilin1
研究概要

癌の増殖や関節リウマチなどの慢性炎症組織では癌組織や慢性炎症組織への栄養と酸素の供給のために血管新生像が観察される。こうした血管新生を抑制することにより、癌増殖や慢性炎症の沈静化を目指した治療戦略が研究されている。研究代表者は、人工試薬を用いてin vitroで血管内皮細胞表面受容体分子の内在化を成功させ、in vivoで血流を介した薬剤デリバリーにより血管新生現場での内皮細胞を標的にして血管新生を抑制できることを証明した。こうした斬新な研究をさらに展開し、海外の研究者とも共同研究を開始し、広く血管新生阻害の研究に取り組んだ。
(1)新しい薬理機構での阻害剤「くり込み薬」を用いた血管新生阻害。これまで人工試薬が細胞表面のNeuropilin1(NRP1)を細胞内へくり込ませて表面から分子消失させることに成功した。さらに別の化学物質をスクリーニング中である。
(2)もともと生体内に存在している因子を用いた新規血管新生阻害因子の利用。米国NIH/National Eye InstituteのLee C.らとの共同研究として、VEGF-Bによる血管新生阻害の仕組みの解明に取り組んだ。血管新生に重要なFGF受容体にVEGF-Bが結合し、血管新生因子FGFを阻害する機構として、VEGF-B分子とFGF受容体の結合を生化学的手法で解析して結合定数を得た。こうした相互作用の生化学的分析は、FGF受容体を阻害する機構に裏付けを与えるものである。結果は論文として投稿、revise中である。
(3)新規血管新生阻害抗体の解析。米国NIH/National Cancer InstituteのG.Tosatoらの研究チームと新規な血管新生に関与する分子群であるEphrinファミリーに関する研究を共同で開始し、阻害抗体の特徴について生化学的解析を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

交付申請時には計画していなかった米国NIH/National Eye InstituteのLee C.、NIH/National Cancer InstituteのG.Tosatoらと血管新生阻害機構に関する共同研究を開始した。彼らの研究は血管新生を抑制する生理的物質の性状の解析であり、私がこれまで行ってきた血管新生阻害研究の流れに沿うものであったため共同研究を実施した。その結果、順調な成果を上げることが出来、共著者として論文を投稿した。米国NIHに所属する研究者との共同研究は予定外の研究課題ではあるが、こうした共同研究を維持し成果を共有することは今後の研究展開、先端情報を共有できる点で有益である。2研究チームと共同研究を開始したことを考えると、当初の計画どおりの進捗ではないが評価できる。
なお、交付申請書には結果如何によっては計画の変更があると説明しており、そうしたケースにあたるものである。

今後の研究の推進方策

これまで、硫酸多糖類やオリゴあるいはポリグアニジンが細胞表面のNeuropilin-1(NRP1)を細胞内へくり込ませて細胞表面からNRP1分子を消失させることを示してきた。本来のリガンドであるVEGF-AやSema3AのNRP1への結合が著明に低下し、それらのリガンドの作用を効率よく阻害することをin vitroやin vivoの実験系を用いて証明してきた。さらにこれらの分子と構造が類似する化学物質をスクリーニングしていく。

次年度の研究費の使用計画

初代血管内皮細胞、シャーレ、培養液、ピペットなどの細胞培養に関する費用。研究課題である「くり込み」作用を持つ可能性のある各種試薬。細胞表面蛋白質に対する一次抗体、標識二次抗体などの購入に関する費用。血管新生の研究テーマに関係する共同研究者との打ち合わせのための旅費。国際学会参加費用。等に支出する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Interleukin-6; pathogenesis and treatment of autoimmune inflammatory diseases.2013

    • 著者名/発表者名
      Tanaka T, Narazaki M, Masuda K, Kishimoto T.
    • 雑誌名

      Inflammation & Regeneration.

      巻: 33 ページ: 54-65

  • [雑誌論文] Tocilizumab: An Updated Review of Its Use in the Treatment; Rheumatoid Arthritis and Its Application for Other Immune-Mediated Diseases. Clinical Medicine Insights2013

    • 著者名/発表者名
      Tanaka T, Ogata A, and Narazaki M.
    • 雑誌名

      Therapeutics

      巻: 5 ページ: 33-52

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Therapeutic implications of tocilizumab, a humanized anti-interleukin-6 receptor antibody, for various immune-mediated diseases: an update review.2012

    • 著者名/発表者名
      Tanaka T, Ogata A, Shima Y, Narazaki M, Kumanogoh A and Kishimoto T.
    • 雑誌名

      Curr Rheumatol Rev

      巻: 8 ページ: 209-226

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A case of Behçet's disease treated with a humanized anti-interleukin-6 receptor antibody, tocilizumab.2012

    • 著者名/発表者名
      Hirano T, Ohguro N, Hohki S, Hagihara K, Shima Y, Narazaki M, Ogata A, Yoshizaki K, Kumanogoh A, Kishimoto T, Tanaka T.
    • 雑誌名

      Mod Rheumatolol

      巻: 22(2) ページ: 298-302

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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