今後の研究の推進方策 |
TOP2B遺伝子再構成が確認された中皮腫細胞株においてRT-PCRにより融合転写産物を同定し、その発現を確認する。さらにその融合転写産物の全構造を決定する。 複数の中皮腫細胞株を対象にTOP2B遺伝子が再構成に関与していないか解析を進める。また、これまでに融合遺伝子が同定された肺癌や前立腺癌では、その遺伝子だけではなく、他の同種のファミリー遺伝子についても融合に関与していることが明らかになっている。本研究においても、TOP2B遺伝子以外のTOPファミリー遺伝子が転座切断点上に局在するような染色体転座がないか、中皮腫細胞株を対象に探索する。具体的には、4つのTOPファミリー遺伝子(TOP1,2A,3A,3B)について、bacterial artificial chromosome(BAC)クローンをプローブとして中皮腫細胞の分裂中期染色体でFISH解析を行う。FISHシグナルが2つに分断していれば、その遺伝子が切断点上に局在している可能性が強く、Southern blot解析で再構成を確認した上で融合相手遺伝子を同定する。 今回SKY法によって9番染色体と4番および12番染色体間の2つの転座が新たに見いだされたが、SKY法等による染色体解析レベルでは可視的に同定できないような潜在的な染色体転座によっても融合遺伝子が形成されている可能性がある。そこで、当該中皮腫細胞株よりcDNAライブラリーを作製し次世代シーケンサーと遺伝子解析ソフトにより網羅的に融合遺伝子を同定する新方法を導入することも検討する。本計画で同定された融合遺伝子のなかから治療の分子標的となるような遺伝子を見い出すことも将来的な研究の推進方策として考えていきたい。
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