研究概要 |
[目的] 我々はWnt/β-cateninシグナル系が発達肺気道上皮の分化に重要であることを明らかにした。本研究では気道上皮および肺癌細胞におけるp63/Sox2/Sox9/Notch発現を中心にWnt/β-cateninシグナル系の気道上皮分化制御機構および肺癌への関与を明かにすることを目的とする。 [方法] 平成25年最終年度は、まず、前年度に確立したヒト株化気管支基底細胞(VA10)の3次元培養法を用い、肺発達関連重要因子Wnt3a, FGF10, EGF刺激によるVA10のsphere形成に及ぼす細胞動態の解析を行った。次に、株化肺癌亜型細胞よりRNAを抽出、cDNAを作成し、Real-Time qPCR法により各亜型間における、Sox2/Sox9/Notch遺伝子発現の比較解析を行った。さらに、BIO処理VA10よりDNAを回収し抗β-catenin抗体によるChIPアッセイを行った。 [結果] VA103次元培養において、Wnt3a, FGF10(Heparin存在下でのみ有効), EGFいずれの刺激でもVA10細胞のshort buddingが誘発された。また、Wnt3a/EGFの共刺激でbuddingが長く顕著であり、走化能および分裂能に重要な影響を及ぼすことが確認できた。Real-Time qPCR解析で、Sox2は小細胞癌、腺癌に、Sox9は腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌に、Notch1は腺癌、大細胞癌に発現が高い傾向が見られ、それぞれの肺癌亜系の癌化、増殖への関連が示唆された。BIO処理VA10細胞抽出DNAからの抗β-catenin抗体によるChIPアッセイではDNA断片化処理条件決定を行い現在Sox2プロモーター領域を中心に解析を継続進行中である。
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