研究課題/領域番号 |
23590468
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
山中 正二 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (80264604)
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研究分担者 |
山口 章 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (20381585)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | GM2ガングリオシドーシス / サンドホフ病 / 炎症反応 / 自己抗体 / ガングリオシド |
研究概要 |
ライソゾーム病のひとつであるガングリオシドーシスは、中枢神経系に先天的に代謝できないガングリオシドが蓄積することにより、種々の障害が引き起こされ、病態が進行すると考えられてきた。一方、近年の研究で、この病態の進行は中枢神経系へのガングリオシドの蓄積以外の要因により、炎症反応等が引き起こされることが示唆されている。我々は、サンドホフ病(SD)モデルマウスを用い、中枢神経系に進入した自己抗体、及び細胞外に放出された代謝できないガングリオシドが炎症反応を引き起こしていると推測し、これらを中心に、ガングリオシドーシスの炎症反応発症メカニズムの解明を試みた。SDマウスの中枢神経系では、病態の進行と共に炎症性サイトカインTNF-αの発現が確認され、且つ関節炎リウマチなどの自己免疫疾患において病変部分で発現が確認されているB細胞遊走性ケモカインCXCL-13、B細胞の分化やIg抗体の産生に関与しているTNFスーパーファミリーの一つBAFF(B cell activating factor)の発現を確認した。一方、自己抗体の産生が低減し、病態進行が緩和することが確認されているFcrγ遺伝子欠損SDマウスでは、中枢神経でのTNF-α, CXCL-13発現量がSDマウスの約半分程度まで低減し、SDマウスの中枢神経系で見られる神経細胞の脱落、変性も改善していることを確認した。SDマウスでは、中枢神経系での炎症反応を低減させることにより病態の進行が緩和することが確認されており、これらの知見がSDにおいて抗炎症剤を用いた新たな治療法の開発に繋がる可能性のある大変意義のある結果と考えられる。次年度は更にSDマウスの炎症起因因子を網羅的に解析し、炎症反応発症メカニズムを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は、SDマウス、Fcrγ欠損SDマウスを用いて、TNF-α, CXCL-13、BAFF発現量の経時的解析、組織学的解析等を行った。しかし一方、震災の影響の影響で十分な量のモデルマウスの準備が出来ず、in vitroの系での炎症メカニズムの詳細な解析を行うことが出来なかった。 <今後の研究の推進方法>今年度は計画書通りFcrγ欠損SDマウスとSDマウスを比較することにより、自己抗体が中枢神経系におけるTNF-αの発現に関与していることが確認できた。更に炎症反応を誘発する因子としてSDマウスの中枢神経系でBAFFの発現が認められた。しかし、本年度は震災の影響でFcrγ欠損SDマウスの繁殖が遅延し、in vitroの系での炎症メカニズムの詳細な解析を行うことが出来なかった。そのため、平成24年度は、BAFFの発現誘導に関与しているケモカインCXCL-13を欠損したSDマウスを用いin vivoの系での解析を追加し、且つ、他グループの発表する研究成果を柔軟に取り入れ、SDの炎症メカニズムの解明を行う。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、SDマウスにおける各臓器での経時的なCXCL-13の発現量の測定、免疫染色等を概ね計画書通りに終わらせた。一方、現在cxcl-13 -/-,hexb-/-遺伝子欠損マウス(DKOマウス)を交配により作成しており、今年度予定していたサイトカインアレーに関しては24年度にDKOマウスができ次第実施する。そのため、24年度は計画書に記載した通り、DKOマウスを作成し表現型の解析を行い、且つ23年度に予定していたサイトカインアレーを追加で実施する。平成25年度計画書通り、本研究で得られた知見を基にSDマウスの免疫異常をターゲットにした治療法の基礎研究として、免疫グロブリン大量療法(IVIg)、及びCXCL-13中和抗体をSDマウスに投与し、その治療効果を評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
使用を予定している研究費として、申請した1, マウス飼育費2, 試薬、消耗品(実験動物用品、細胞培養試薬、遺伝子発現解析試薬等)を予定通り使用する。
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