研究概要 |
ライソゾーム病の一つであるガングリオシドーシスは,中枢神経系に先天的に代謝できないGM2ガングリオシド(GM2),アシアロGM2ガングリオシド(GA2)が分解されずにリソソーム内に蓄積し,炎症反応等の種々の障害が引き起こされ,病態が進行すると考えられてきた.一方,近年の研究で,この病態の進行は中枢神経系へのガングリオシドの蓄積以外の要因により,炎症反応等が引き起こされることが示唆されている. 我々は,サンドホフ病マウスを用い,中枢神経系に進入した自己抗体,及び細胞外に放出された代謝できないガングリオシドが炎症反応を引き起こしていると推測し,これらを中心に,ガングリオシドーシスの炎症反応発症メカニズムの解明を試みた. これまでに,病態の発症が認められる14週齢SDマウスの中枢神経系において,活性化マイクログリアの増殖を確認し,ケモカインMIP-1α,CXCL-13,サイトカインTNF-α,IL-1β,TNFスーパーファミリーの一つBAFF等が高発現しているのを見出した. 更に,これら炎症関連因子の誘導要因として,代謝されない細胞外に遊離したガングリオシドGM2,GA2が,直接TLR-4を介してマイクログリア等を刺激し,MIP-1α,CXCL-13,TNF-α,IL-1βを産生することを見出したが,BAFFの産生は認められなかった. BAFFの異常発現はSLE等の自己免疫疾患で確認されており,主にB細胞の異常活性化や自己抗体の産生を介した自己免疫疾患で確認されている.そこで自己抗体の産生の低減を狙って作製したB細胞遊走性ケモカインCXCL-13遺伝子を欠損させたSDマウスでの14週齢でのBAFFの発現量を確認した結果,同週例のSDマウスより低減していることが確認された. これらのことから,SDマウスの炎症発症機序は,遊離したガングリオシドが直接マイクログリアを刺激し,炎症性サイトカインの発現を促すと同時に,CXCL-13やBAFFの異常発現により自己抗体産生B細胞の誘導,活性化が促されて病態の進行に関与している事が示唆される.
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