研究課題/領域番号 |
23590477
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
内藤 善哉 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20237184)
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キーワード | 癌幹細胞 / 膵癌 / 前癌病変 / 癌幹細胞マーカー |
研究概要 |
今回の研究では、ヒト膵癌組織での各種癌幹細胞(CSC)マーカーの比較検討を行ない、特異性の高いCSCマーカーを明らかにし、ヒト膵癌組織からCSCsを選択的に抽出・解析することを目的としている。膵癌では、CSCマーカーとしてCD133, CD44,CXCR4,ESAおよびnestinなどが報告されており、昨年度は、これらのCSCマーカーの臨床上の意義や役割を検討するため、浸潤性膵管癌(PDAC)とその前癌病変(PanIN)、および正常膵でのこれらの発現レベルを解析した。 これらの解析で、CD133以外のCSCマーカーは、正常膵管<PanIN<PDACの順に増加し、CD133、ESAおよびCXCR4発現は、静脈侵襲や分化度と関連している事を報告した。 今年度は、通常型(CPDAC)とその前癌微小病変であるPanINおよび膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とIPMN由来の膵管内癌(ICIS)と(IPDAC)について、CSCマーカーCD24の発現とともに最近、CSC関連マーカーとして報告されたPSF1、並びにCSCや癌細胞の増殖増殖マーカー Ki-67 や PSF1 と複合体を形成し増殖や癌の進展に関与するMCM2 について検討した。 その結果、CD24は、PanIN、IPMNの腺腫、ICIS、さらにCPDACやIPDACで病変細胞や腫瘍腺管に陽性となり、特にIPMNの腺腫、ICISやIPDACでは、強発現する傾向を示した。一方、PSF1は、各病変の発現に有意の変化は、みられなかった。Ki-67,およびMCM2の発現は、PanINに比し、IPMN腺腫の異形成の程度につれ増強し、特にICIS、CPDACやIPDACの両タイプの癌で、有意に高発現していた。さらに、MCM2はKi-67より高率にICIS、CPDACやIPDACの癌細胞・腺管で陽性となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、ヒト膵癌組織における各種の癌幹細胞(CSC)マーカーの発現レベルを解析し、現時点での経過報告を米国癌学会(2012年4月開催)に演題投稿し採択され、その内容は、International Journal of Oncology (2012年7月)に掲載されるなど、おおむね順調に進行している。さらに、通常型膵管癌(CPDAC)とその前癌微小病変であるPanINおよび膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)とIPMN由来の膵管内癌(ICIS)とIPMN由来膵管癌(IPDAC)について、新規のCSCマーカーや前癌病変や癌の増殖進展に関係するマーカーに付いても検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究の対象となるヒト膵癌の症例数と発癌経路が異なる可能性の高い前癌病変PanINおよび膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)など組織型を増やし、さらに検討を重ねる。膵癌の新たな早期診断や治療標的の開発のために、癌の進行の各段階ごとにCSCマーカーの発現を解析し、結果をまとめていく。また、各種癌細胞マーカーの局在について、増殖能や分化度などを組織内で比較検討し、膵癌幹細胞マーカーの有力な候補を絞りこみ、このマーカーにより癌幹細胞をヒト膵癌組織から選択的に採取する。これらの癌幹細胞と、培養膵癌細胞のSP分画から得られた癌幹細胞をaldehyde dehydrogenase活性や表面マーカーで選択し、生物学的な特徴について検討を行う。これらの結果から得られる解析から、分子標的治療や新たな治療法の可能性につき検討を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に引き続き、異なるタイプの前癌病変やそれらに由来する浸潤性膵管癌について、さらにCSCマーカーの発現を解析を進める。また、ヒト膵癌培養細胞株(PANC-1, MIAPaCa-2, KLM-1, PK-45H)をもちいて、膵癌の癌幹細胞マーカーの発現につき、免疫染色、質量分析、Quantitative real-time PCR、フローサイトメトリー等の手法を使って、さらにその作用をまとめていく。 具体的には、ヒト膵癌培養細胞株を用いて、膵癌幹細胞において高発現する分子を発現する細胞をフローサイトメーターにて分離する。得られた細胞を用い腫瘍形成能などの生物学的な検討を行い、膵癌幹細胞が採取されているのかを検証する。その中で生物学的な変化について細胞形態、増殖の検討を行い、癌幹細胞の増殖・維持・分化に関連する分子、タンパク質や遺伝子を解析し有用な新規膵癌幹細胞マーカーや関連する分子、タンパク質・種々のRNA・遺伝子を同定する。さらに、これらの新規膵癌幹細胞マーカーや関連する分子、タンパク質・種々のRNA・遺伝子の制御を行い膵癌幹細胞における役割やその制御機構の解明を進める。これらの結果から得られる解析から、膵癌における新規分子標的治療や新たな治療法の可能性につき検討を行なう。
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