研究課題/領域番号 |
23590478
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
板野 直樹 京都産業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40257712)
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キーワード | がん微小環境 / ヒアルロン酸 / 淘汰圧 / マクロファージ |
研究概要 |
本研究では、「がん細胞自らがその生存に不利な環境をがん組織内に形成することで、細胞の淘汰を促進して、集団として拡大戦略を図る」という淘汰圧の自己形成と回避の機構を提案し、その解明を目指して研究に取り組んだ。 今年度は、乳がん特異的にヒアルロン酸を過剰産生するコンディショナルトランスジェニックマウス群の乳がん組織からがん細胞を樹立し、対照がん細胞とマクロファージ活性化に対する作用や各種炎症性サイトカインの発現について比較検討した。NF-κB応答性にレポーター分子(Secreted Embryonic Alkaline Phosphatase; SEAP)を発現するRAW-Blueマクロファージ細胞株を用いてがん細胞と共培養し、がん細胞によるマクロファージ活性化をレポーター分子の発現を指標に解析した。その結果、ヒアルロン酸過剰産生乳がん細胞の培養上清中には、対照がん細胞の上清に比べてマクロファージ賦活化作用を有する因子が多く含まれていることが分かった。次に、炎症性サイトカインの発現を検討したところ、TNF-αの発現がヒアルロン酸過剰産生乳がん細胞で有意に亢進していることを明らかにした。以上の結果は、がん細胞におけるヒアルロン酸の産生増加により、炎症性サイトカイン産生能とマクロファージ賦活化能が高まることを示唆している。 今後、マクロファージ活性化に続く免疫細胞賦活化の機構を解析し、がん細胞の生存に不利な環境が形成される機構の詳細とその淘汰圧を回避する機構について、細胞生物学的及びマウスへのがん細胞の移植実験により明らかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画していた研究項目のうち「乳がんにおける淘汰圧の自己形成機構の解明」については、ヒアルロン酸過剰産生乳がん細胞を用いた細胞生物学的解析を計画通りに進め、研究実績に記載のように当初目標をほぼ達成した。また、平成25年度に予定していた研究項目の「耐性がん細胞の免疫回避機構の解析」については、その実施を開始し、順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、ヒアルロン酸合成酵素2遺伝子を過剰発現する乳がん発症モデルマウスを用いて、がん組織における淘汰圧の形成機構を解明する。このため、炎症細胞・免疫細胞の乳がん組織内への浸潤やがん細胞死について、ヒアルロン酸産生がん細胞と対照細胞の形成する移植がんにおいて比較・検討する。また、両がん細胞に対して、蛍光タンパク質の遺伝子を導入して異なる蛍光で標識し、移植がんにおける各細胞群の蛍光比率とがん幹細胞の割合をFACSにより解析して、ヒアルロン酸淘汰圧下に刺激される細胞競合とがん幹細胞の選択的な生存について検討する。また、炎症や免疫反応を回避して選択的にがん幹細胞が濃縮される機序について、分子生物学的かつ免疫学的な解析を実施する。具体的には、がん幹細胞の培養上清をマクロファージに添加後、レポーター遺伝子の発現を指標に、抗腫瘍免疫に働く分子の特定を試みる。同時に、免疫抑制作用を有している因子については、ELISA法を用いて定量解析を行い、これら分子の関与を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、実験補助員の採用が不調に終わったことにより、執行を予定していた実験補助員に係る費用が未使用となり、次年度への繰越が生じた。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、今後、実験補助員を採用し、当初計画していた研究体制を速やかに構築した後、今年度未実施の上記研究項目について対応するとともに、当初予定の計画についてもその完遂を目指す。実験計画の若干の見直しに伴って、消耗品費の増加が見込まれるため、今年度未使用額を加算した額を計上して対応する。そして、次年度は得られた成果を発表するための経費を計上する。
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